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図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

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図書館からの帰り方 10

――また何か言って、下着まで脱がれたら大変だ。
「まあ、ひどい……」
やがてカッターシャツと下着がなくなり、雄鯉の上半身が露わになると歌梨奈は眉をひそめた。実際そこには怪我をした当の雄鯉がちょっと驚くほど、多数のアザや切り傷があったのである。
――うへえ。こんなにやられてたのか。道理で痛かったわけだ!
「下の方も見せてください」
続いて歌梨奈は、雄鯉のベルトを外す。さすがにズボンまで脱がせてもらうのは気が引けるので、雄鯉は靴を脱いでから、自分で脱ぎ捨てた。
「こっちもひどいわ……」
「……ですね」
ブリーフ一枚になってみると、足にもいくつかの傷があった。透明女に足をやられた記憶はないから、多分川に落ちてからのものだろう。
「上の方から、手当てしますね」
「はい……お願いします」
歌梨奈は雄鯉の上半身を治療し始めた。傷を消毒し痣に湿布を貼り、最後に包帯を丁寧に巻く。それが終わると、彼女は雄鯉の足の治療にかかった。上半身と同様、処置を施していく。
「これで終わりです……他に痛むところはありますか?」
「いえ……もうありません」
「よかった……少し待っていてくださいね。今お布団敷きますから」
「え……? でも僕そろそろ失礼しないと……」
「駄目です。今日はずっと、ここで安静にしていてください。私今日は大学がお休みで、一日中雄鯉さんのお世話ができますから」
「あ、あの……僕は学校が……」
「学校!? そのお体で何を言ってるんですか!?」
歌梨奈が柳眉を逆立てた。その剣幕にびびってたじろぐ雄鯉だが、ここで折れるわけにはいかない。
「こ、こんな怪我大したことないですよ……」
自分でも説得力がないと思いつつ、雄鯉は抗弁した。
やはり、できることならこの部屋で眠りこけるのは避けたい。
あれだけ親切にしてもらって、まだそんなことを思うのは非礼だと重々承知している。しかし、昨夜遭遇した尋常ならざる出来事を考えれば、どんなに用心しても用心し過ぎることはないと雄鯉には思えた。出会ったタイミングからして、歌梨奈があの透明女と無関係であるとは言い切れないのである。
また、仮に全く関係なかったとしたら、自分と関わることで彼女を変な事態に巻き込んでしまうかも知れない。どちらにしろ、ここは引き揚げるに限るだろう。雄鯉はそう考えた。
「だから僕、帰ります。今のお礼は後で必ず……」
雄鯉は立ち上がり、服と鞄を拾った。そしてふらふらとよろけながら、出口を目指そうとする。
「…………」
そんな雄鯉の行動を、歌梨奈はしばらく黙って見ていた。だが、雄鯉が部屋を出ようとしたとき、寂しそうにこう言う。
「私のこと、信用できませんか?」
「え……?」
「当然ですよね。ついさっき、会ったばかりですもの……」
「!!」
雄鯉の体はビクリと跳ね上がり、どっと冷汗が噴き出した。彼はその場に足を止め、しばしの間茫然と立ち尽くす。

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