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図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

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図書館からの帰り方 21

「大丈夫だよ」
みづりは自分のバッグを指さして言った。
「ちゃんとお泊りセット、持ってきたからね」
「……え? 泊まるってどこに……?」
「何言ってるの? 雄鯉君。ここに決まってるじゃない」
怪訝な顔をしながら、真下の床を指さすみづり。雄鯉は焦った。
「う、浮橋さん? ここ、僕しか住んでないんだけど……」
「知ってるよ。雄鯉君、一人暮らしだよね。だから?」
「いやいや、まずいでしょ……男女が2人きりで泊まりなんて……」
「雄鯉君、私に今から帰れって言うの? もう夜なのに……私、夜道で変質者に襲われちゃうかもよ?」
みづりは不機嫌そうな顔で雄鯉を見つめる。雄鯉は慌てて首を横に振った。
「ま、まさか! そんなことを言うつもりは……」
「じゃあ、お泊りOKだね?」
「そ、それは……」
どうしよう。何かいい方法はないか。雄鯉は考え込む。
――そうだ。隣の岬川さんにまた助けてもらうか……
彼女には世話になりっぱなしなので気が引けるが、女性同士なら一緒に寝泊まりしても大丈夫だろう。少なくとも高校生の男女2人が同じ部屋で寝るより健全だ。
「あ、あのさ浮橋さん……」
「何?」
「……泊まるのは、この部屋じゃないと駄目かな?」
「は? どういう意味?」
気色ばんで身を乗り出してきたみづりに、雄鯉はたじろぎながら説明しようとした。
「いや……やっぱり男女2人だけで泊まるっていうのアレだし……今、隣に女子大生の人が住んでるんだけど」
「女子大生?」
みづりの視線が険しくなった。
「雄鯉君……女子大生とか、気を付けた方がいいよ?」
「え……? 何が……?」
「女子大生なんて、大概勉強そっちのけで男と遊んでるビッチなんだから。雄鯉君、できるだけ距離を取って接触を断たないと、変な業界に連れてかれちゃうよ?」
「何その偏見……?」
みづりだって、高校を卒業して進学したら女子大生になるかも知れないのに。雄鯉は困惑した。とても隣で泊まったらと言い出せる雰囲気ではない。
「……ええと、その……」
「もういい? シャワー浴びたいんだけど」
一方的に話を打ち切り、みづりが立ち上がった。荷物を持ってリビングを出ていく。
「あ……」
引き止め損ねた雄鯉を、みづりは振り返った。
「雄鯉君。これから私全裸でシャワー浴びるけど、覗かないでね?」
「の、覗かないよ」
いきなり言われて、雄鯉は困惑した。覗きをするようなやつだと疑われているのか。
重ねてみづりは言った。
「全裸ってことは胸とかお尻とか恥ずかしいところが丸出しなわけだから、覗かないでね?」
「わ、分かってるよ……」
どれだけ念を押すのか。と言うか、それだけ不安なのに何故あえてシャワーを浴びるのか。
「私って結構ボーっとしてるから、扉開けて覗かれても、そのままフラッシュ焚いて盗撮されても全然気が付かないと思うけど、覗かないでね?」
「フラッシュ焚いたら盗撮じゃないよね……?」
「それから万が一気が付いたとしても、私って気が弱いから言い出せなくて、見られるだけ見られて撮られるだけ撮られて泣き寝入りしちゃうと思うから、覗かないでね?」
それだけ言うと、みづりはバスルームへ歩いて行った。後に残された雄鯉は椅子に腰かけたまま、体重を後ろに預けて天井を仰いだ。
「浮橋さん、美人だし僕と仲良くしてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっと変わってるんだよな……」
いや違う。そんなことを言っている場合ではない。雄鯉は思い直した。
みづりがこのまま雄鯉の部屋に泊まるとして、明日は一緒に学校に行き、放課後はそれぞれの家に帰るだろう。つまり、少なくとも明日の登校までみづりを危険に晒さないように気を付ける必要があるというわけだ。
あの透明女が雄鯉の部屋を突き止めて襲ってきたり、通学途中に待ち受けていたりすると決まったわけではない。しかし、あれだけの喧嘩をしたのである。もう向かってこないと考えるのは虫がよすぎる。油断するわけには行かないだろう。
――明日の登校は、いつもと違う道を使うか。浮橋さんには何とか言って誤魔化して……
立ち上がり、キッチンの流しで歯を磨きながらそんなことを考えていると。みづりが戻ってきた。
「遅いよ! 雄鯉君」
「えっ? 何が……?」
「私もう上がっちゃったよ?」
寝間着姿のみづりは、何故か不機嫌になっている。雄鯉は訳も分からずに宥めにかかった。
「ご、ごめん。ちょっと考えごとしてて……」
「まあ、今日はしょうがないよね。雄鯉君怪我してるし……」


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