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図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

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図書館からの帰り方 1

最近は公立の図書館でも、夜遅くまで開館するところが出てきている。例えば今ここに夜道を歩いている少年、玉波雄鯉(たまなみ ゆうり)の住む町の図書館がそうだった。彼はその恩恵に預かって、この日も夜更けまで読書を堪能していたのである。
「あの推理小説、最後まで読みたかったな……でも借りてきても帰ったらすぐ寝なきゃいけないし、また明日の楽しみにするか」
いつしか道に人通りはなくなり、両側に雑木林が目立つようになった。まばらにある街灯が、彼の影を二つ三つ地面に落としている。
――少し急ぐか……
部屋を借りているアパートまでの道のりは、残り半分といったところだろう。若干時間が気になった雄鯉は、小走りになって帰宅を早めようとした。だがそのとき、不意に前方から誰かの走ってくる気配がする。
「おっと」
雄鯉は走るのを中止し、脇へ寄ってやりすごそうと試みる。ところがである。前から走ってくる相手を見た途端、彼の表情は引きつり、体が完全に固まった。
「なっ!」
「はあ……はあ……」
息を切らして走ってくるのは、一人の少女だった。年の頃は15歳の雄鯉と同じくらい。髪はショートカットで、体に不釣り合いなほど大きな乳房を激しく揺らしている。
とまあそれはいいのだが、彼女の格好に雄鯉は違和感を覚えていた。頭には大きな猫耳が付き、体を覆っているのは革のようなものでできたビキニだけなのである。完全無欠に、「それ何ていうコスプレ?」の世界だった。
「た、助けてえっ!」
「うわっ!?」
のみならず、猫耳少女は雄鯉の姿を認めると、真一文字に彼に向って抱きついてきた。少女の体温と乳房のひしゃげる感触が、カッターシャツ越しに伝わってくる。
――ドッキリだな、これは……
少女を受け止めた雄鯉は、即座に結論を出した。さしあたり、道端でコスプレ中変質者に襲われたという設定か。だが、完成度は今一だと雄鯉は感じた。やはり現実味が薄いのだ。普通はこんな寂れた場所でコスプレなどやらないだろう。
「お、追いかけられてるんです。助けて!」
雄鯉の思惑をよそに、少女は彼の顔を見上げて叫んだ。かなり真に迫っている。服装こそふざけているが、演技力は確かな女優のようだ。
――こんなイロモノ仕事受けなくても、あなたなら実力派で十分やっていけますよ……
そうアドバイスしようとしたとき、いきなり猫耳少女が雄鯉の背後に回り込んだ。
「い、いやっ。来る……」
「えっ?」
雄鯉は前方を見渡した。しかし誰かがいる様子はない。彼は振り返り、少女に声をかけた。
「来るって、誰もいま……」

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