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図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

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図書館からの帰り方 7

「もう一息だ……」
階段を上り、外の廊下を通って一番奥にある自室へ向かう。ところが一つ手前の部屋のドアに差し掛かったとき、いきなりそれが開いて、雄鯉の額をしたたかに打った。
「ぶるがっ!」
雄鯉は廊下に転がり、瀕死の蛇のようにのた打ち回る。どういうことだ。確かこの部屋には誰も入っていないはずなのに。
予期せぬ攻撃だけに、ダメージは大きかった。手すりに掴まり、ようやくのことで雄鯉は起き上がる。すると、ドアを開けたと思しき人物が彼に声をかけてきた。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」
「ん?」
声のした方に視線を向けると、そこには雄鯉の全く知らない女性が立っていた。年齢は二十歳前後だろうか。身長は雄鯉より数センチ高く、茶色の髪をポニーテールにしている。くびれた腰に、サッカーボールでも入れているのではと思えるほど大きな胸。白い袖無しのワンピースに包まれた体は、グラビアモデル顔負けのラインを誇っていた。
――誰だ一体……?
普通に考えれば、新しい入居者なのだろう。だがもし新しい人が入るなら、事前に大家さんから説明があるはずだ。今まではそうだった。
――つまり、昨日の朝僕が学校に向かった後で入居が決まって、それから十時間ちょっとで移転したってことになる……
そんなスピーディーな引っ越しが、果たしてあるものだろうか。納得し切れない雄鯉だったが、とりあえず相手の名前を聞いてみようと思った。
「あ、あの……自分はこのアパートに住んでる玉波雄鯉ですけど、あなたは……?」
「昨日からここでお世話になっている岬川歌梨奈(みさきがわ かりな)です! それよりちょっと見せてください!」
「え……?」
気が付いたときには、雄鯉は歌梨奈と名乗る女性に両手で頬を押さえられ、至近距離から顔を覗き込まれていた。どんな風に接近されたのか全く分からない。軽いパニックに陥った雄鯉は、思わず相手の肩を両手で突き放そうとした。
「や、やめてください!」
ところが、歌梨奈の腕力は外見から想像もできないほど強かった。いくら消耗しているとは言え、雄鯉がいくら頑張っても全く歯が立たないのである。
「暴れないでください! 見えないじゃないですか!」
「くお……何で……」
こんなに強いんだ。その疑問の答えを得ることなく、雄鯉は手すりに押し付けられた。鉄製品の硬い感触が、彼の背中に食い込む。
「動かないで、ください……」
歌梨奈は雄鯉に体を浴びせかけ、絶対に逃げられないよう固定した。小山のような彼女の乳房が、プニョンと雄鯉の胸板で形を変える。
「ううっ……」
「まあ、ひどい。私のせいでこんなに……」
無意味な抵抗を続ける雄鯉の顔を優しく撫で、歌梨奈が悲痛な声を上げた。雄鯉は何と言っていいのか分からなかったが、取りあえず当たり障りのない説明をしておこうと考える。

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