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図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

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図書館からの帰り方 3

正直なところ、まだヘルメットの女性が敵かどうかは分からないのである。だが、すぐにそうも言っていられなくなった。
「仕方ないな……」
女性がヘルメットに手をやり、その姿がかき消えるように見えなくなっていったのである。先程とは逆だ。
――まずい!
雄鯉は慌てた。姿を消されては相手のいいようにされてしまう。かなりのリスクはあるだろうが、もう仕掛けるしかなかった。彼は相手の足もとに飛び込み、タックルで押し倒そうとする。寝かせて上から抑え込めば、例え見えなくてもまだ何とかなる余地があると彼は考えていた。
「うおおっ!」
だが、彼の行動は功を奏さなかった。雄鯉が飛び込んだときには、すでに相手は姿を消し、どこかへ移動してしまっていたのである。
――畜生!
慌てて回りを見渡すが、もちろん見つかるはずもない。立ち上がって適当にその辺の空間を殴ったり蹴ったりしてみるが、これまたかすりもしなかった。
「ぐっ……」
雄鯉は動きを止めた。近寄ってこようとする猫耳少女を「来ないで!」と制し、周囲に意識を集中する。こうなったら一か八か、相手が攻撃してくるときの音か空気の動きを捉えて反撃するしかない。
――だが、そう上手く行くかどうか……
案の定、雄鯉はいきなり額に強い衝撃を感じた。
「がっ!」
彼は踏ん張ることなく、そのまま後ろに倒れた。おかげで衝撃が逃がすことができ、ノックアウトされることは免れる。すぐに立ち上がったが、今度は右の脇腹に攻撃が来た。殴られたのか蹴られたのかも分からないまま、雄鯉は再び地面に転がる。
――駄目だ!
余程の達人なのか、はたまたハイテクの賜物なのか、女性は雄鯉に全く気配を悟らせることなく攻撃を加えていた。
このままではいずれ失神させられる。そう判断した雄鯉は立ち上がり、鞄を茂みに投げ捨てて駆け出した。途中で「来て!」と言って猫耳少女の手をつかみ、共に走っていく。一人なら百メートルを十秒台で走れるのだが、ヘルメットの女性が雄鯉を無視して猫耳少女に襲いかかる可能性がある以上、そうはいかなかった。
「ぷはあっ!」
無呼吸で数百メートルを走り抜き、雄鯉は川にかかった橋の中央で停止した。
もとより逃げ出す気など毛頭ない。逃げられるぐらいなら苦労はないだろう。
――ここなら、まだ何とかなるかも知れない……
雄鯉は猫耳少女に、「行ってください!」と促すと、背中を橋の欄干に付けた。少女は若干迷う様子を見せながらも、彼の言うことに従って走リ去る。
――これでいい。さあ来い!
今の体勢だと、攻撃を受けたとき自ら吹っ飛んで衝撃を逃がすことはできない。その代わり、攻撃される方向をほとんど前からだけに限定できるというメリットがあった。それが果たして吉と出るか凶と出るか、雄鯉は両腕で顎の辺りをガードしつつ、敵の接触を待つ。
「ぐがっ!」
頭に衝撃が来た。それを皮切りに何発もの攻撃が雄鯉の体の至るところにヒットする。

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