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図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

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図書館からの帰り方 18

――身に付けるものはこんなところか。後は……
雄鯉はスチール製の定規を出し、鞄に仕込んだ。いざというとき、抜いて使えるようにしておく。それから布製の袋を2枚重ね、その中に大量の小銭を入れた。そのまま振り回せば打撃武器になるし、中の小銭を掴んで相手にぶつけるという使い方もできる。怪我のためポケットから財布を取り出せないという口実を設ければ、怪しまれずに持ち歩けるだろう。
――喧嘩支度はこれでいいな。おっと、新しい制服の用意もしなきゃ。
雄鯉は洋服ダンスを開け、新しいカッターシャツとズボンを出す。
――これでOK……ちょっと早いけど、もうストレッチでもして寝ようかな。
そう雄鯉が思ったとき、ふと玄関でチャイムが鳴らされた。
ピンポーン
――誰だ? 岬川さんかな? それとも……
透明女か、その仲間かも知れない。雄鯉は机の引き出しからサバイバルナイフを取り出し、鞘を払った。刃が小指側に来るように右手で持ち、忍び足で玄関に向かう。
ピンポーン
さらにチャイムが鳴らされる。玄関に到着した雄鯉は、右の手首を曲げ、ナイフの刃先を肘の方に向けた。そうやって刃を腕の後ろに隠せば、前からはナイフを持っているのが分からない。
――よし。行くぞ。
雄鯉は額に浮かんだ脂汗をぬぐうと、ドアの向こうの相手に声をかけた。
「……ど、どちら様で?」
「あの、浮橋(うきはし)ですけど……雄鯉君、開けてくれる?」
「浮橋……さん?」
来訪者は、雄鯉の予期していなかった人物だった。
浮橋みづり。
雄鯉のクラスメートの1人である。
雄鯉よりやや長身で、セミロングの髪。スタイル抜群で、学校でも有数の美少女だが、何故かいつも雄鯉によくしてくれていた。
――その浮橋さんが、どうして……?
カチャカチャ、ガチャ……
雄鯉は鍵を開け、チェーンを外すことなくドアを細めに開けた。外に立っているのがみづり本人であることを確認してから、声をかける。
「こ、こんばんは。どうしたの? 浮橋さん」
「あ、あの……今日の授業のノートとプリント、持って来たんだけど」
「あ、ありがとう……」
ノートとプリントぐらい、明日でもよかったのだが。みづりに必要以上に気を遣わせてしまい、雄鯉は恐縮する。
「悪いね。こんな時間に」
「ううん……こっちこそ。遅くにごめんね。でも雄鯉君、今まで急に休んだりすることなかったでしょう? だからどうしたのかなって様子を見に来たのもあるの。迷惑だったかな?」
「いや、そんなことは……とりあえず、ちょっと待ってて」
いつまでも、みづりを外に立たせておくわけにはいかない。雄鯉は一度ドアを閉じると、靴箱を開けて中にナイフを隠した。チェーンを外し、再びドアを開ける。

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