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図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

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図書館からの帰り方 17

歌梨奈の肩を借りて玄関まで出た雄鯉は、そこに並べられていた自分の靴を履いた。そして彼女に支えられたまま、外に出て自分の部屋の前まで歩く。
「それじゃ、お休みなさい……」
「あの、これを……」
「?」
見ると、歌梨奈が一枚の紙片を差し出していた。雄鯉が受け取って見ると、携帯電話の番号と思しきものが書いてある。
「私の電話番号です。何かあったら、夜中でも構いません、いつでも呼び付けてください。すぐに伺いますから」
「ありがとうございます……」
雄鯉は紙片を押し戴くと、深々と頭を下げた。そして顔を上げたとき、
チュッ
「??」
歌梨奈の顔が、すぐ目の前にあった。口にキスされていると理解するのに、しばらく時間がかかる。
――え……? 何……?
頭が真っ白になる雄鯉。口を離した歌梨奈は、彼の耳元でこう、ささやいた。
「今日はこれで我慢します。明日からは、もっともっと仲良くしてくださいね」
そして彼女は雄鯉に背を向け、自分の部屋へと戻っていった。

ガチャ……
自分の部屋に入り、ドアを閉めた雄鯉は、しばらく放心状態だった。
女性にキスされるなど初めての体験で、どう反応していいかも分からない。
――いや、いやいや!
雄鯉は首を振った。今はそれどころではない。彼はあえて、歌梨奈の唇の感触を頭から追い出し、ドアに鍵とチェーンをかける。
カチャッ、カチャ……
――なつかしの、我が家か。
ここを留守にしていたのは一日半程度だが、ずいぶん長いこと空けていたような気がする。靴を脱いで奥へ進んだ雄鯉は、電気を点け、念のために部屋の中を点検して回った。特に変わった様子はない。
――ちょっと神経質になってるのかな?
続いて雄鯉はパソコンを立ち上げ、かねてからの予定通り、インターネットで暗視装置の注文をした。これが手に入れば、透明女との戦いに使えるだろう。もっとも、到着するのは一週間後の予定だが。
――まあ待つしかないな。次は、明日の支度だ。
登下校の途中、あるいは学校で透明女が襲ってくるかも知れない。できれば武器防具フル装備で行きたいところだったが、それでは学校で不審がられてしまう。
――学生の身の悲しさだな。しょうがない。最低限の喧嘩支度で妥協しよう。
雄鯉はタンスを開け、格闘技に使う防具をいくつか引っ張り出した。その中から、制服の下に着けていても外から分かりにくいものを選んでいく。
まず、スポンジの入った膝当てと脛当て。
それから、肘と手首の間を覆うサポーター。
さらに、股間をガードする防具。
最後に、グローブを選んだ。グローブと言ってもボクシングのものとは違い、指が5本とも露出している。そして手の甲から指の背の第2関節まで薄いスポンジが入っており、拳を保護する。通称オープンフィンガーグローブだ。

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