PiPi's World 投稿小説

図書館からの帰り方
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 12
 14
の最後へ

図書館からの帰り方 14

ボウッ……
次の瞬間、大家さんの全身が、無数の光の粒子に包まれた。やがて、光のために彼女の体は見えなくなる。そして数秒後に光が消えたとき、そこには全く別の人物が立っていた。
「ふうっ……」
息ををつきながら現れたのは、歌梨奈とほぼ同年代の女性だった。身長は160センチほど。黒く長い髪の裾は横一直線に切り揃えられ、歌梨奈に劣らず起伏のある体は、真っ黒なボディスーツに覆われていた。
彼女の変身が終わるのを待って、歌梨奈が口を開く。
「本物の大家さんは?」
「就寝中です。脳波から推測して、外部からの刺激がない限り、後1時間は目が醒めないでしょう」
「……そう。目が醒める前に記憶の操作をして、矛盾が出ないようにしないといけないわね」
「致し方ありません。あのとき雄鯉様は、明らかにカリーナ・サキの正体を疑っていました。雄鯉様の信頼する人物の口を借りて、カリーナ・サキの身元保証をすることが不可欠だったと判断します。そして、我々の技術で人の記憶を読み取ったり書き変えたりすることはある程度可能ですが、行動は制御できません」
「そうね……」
頷いた歌梨奈は、しばらく何かを考えていたが、やがて大家さん改めエミエルザに話しかけた。
「ねえ。エミエルザ」
「何でしょうか? カリーナ・サキ」
「助け船を出してもらっておいて悪いのだけど、今の方針、考え直した方がいいんじゃないかしら」
「と言うと?」
「雄鯉さんが起きたら、すぐに私達の正体をお話しして、昨日のことを謝った方がいいと思うの。きちんと事情を話せば、きっと許してくれると思うわ。それから協力をお願いして……」
「しかし、昨夜のアルタクレアとの交戦で、雄鯉様の我々への心証は最悪に近いはずです。地球人を装って接近し、密かに監視しつつ交流を深め、親密になったところで事実を打ち明け、協力を求めるという現在の方針は、最も確実性が高いはずです」
「私も最初はそう思ったわ。でも、本当にその手は雄鯉さんに通用するかしら? あなたも言った通り、雄鯉さんは私の正体に気付きかけていた。いくら隠してもばれるのは時間の問題よ。その前に本当のことを言った方が、雄鯉さんの心証はいいはずだわ」
「…………」
「…………」
2人の間に沈黙が流れる。それを破ったのはエミエルザだった。
「カリーナ・サキの説にも、一定の論理性があります」
「だったら……」
「ですが、現時点で方針の変更はありえません。アルタクレアはすでに、雄鯉様の学校に潜入する準備を整えています。それに私も」
「そう……分かったわ」
いかにも不承不承といった面持ちで、歌梨奈は頷く。それを見たエミエルザは、再び体の周囲に光の粒を発生させ、変身を始めた。
「じゃあ、私はこれで失礼するわね。岬川さん」

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す