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世界の中心で平和を叫ぶ。
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。 90

人の形をしながら、驚異的な身体能力を持つ戦闘員。
そしてそれ以上の身体能力と摩訶不思議な特殊能力を駆使する怪人。
恐怖と破壊の象徴である彼らであったが、そんな彼らにもある弱点がある。
―それは『経験』である。
どれほど人間より優れた肉体と知識を持つ彼らでも、実際に体験した後と前では、実力に明確な差が出るのだ。
たとえるならF1カーに乗せていた素人をプロに変えるくらいの差が表れる。
戦隊ものの番組で、悪の組織の幹部がやたらと強いことがよくあるが、それもこの辺が理由なのかもしれない。
ちなみにこの組織では商品以外の怪人や戦闘員にはみっちりと訓練を施している。
なので多少の被害があっても、負けることはありえないはずであった。
例えばスピードタイプとステルスタイプの場合。
彼らは目に見えるスピードタイプを囮にステルスタイプが攻撃する。
かと言ってステルスタイプに気を取られるとスピードタイプにやられてしまう。
なまじ敵の情報を持っているせいで思考の幅を狭くしてしまい、思うように動けないのだ。
しかし上からモノを言うだけの社長たちにそんなことがわかるはずもなかった。
もっともそれがわかったところで、もう手遅れだろう。
組織中から送られてくる警備部の連絡が次々と途絶えている。
中には敗戦を悟った連中が降伏や逃亡を図る始末であった。

「・・・どうやらここまでのようですな、社長」
「何だと!?」

開発部部長の冷静な判断に、社長は視線で射殺さんばかりの形相で彼を見る。

「お怒りになる気持ちもわかりますが、冷静に状況をご覧ください。
 反乱分子どものゲリラ戦術に警備部の士気は下がり、兵士の何人かはすでに敗走を始めています。
 ここはいったんお引きになり、態勢を整えるのが先決では?」
「・・・・・・ッ!」

部下の言葉に、社長は屈辱を感じながらも少しばかりの冷静さを取り戻す。
そして長い沈黙の後、静かに指令を下した。

「・・・撤退。全社員を会議室へ終結させろ。
 この施設を廃棄する」
『・・・・・・!!』

その言葉に指令室中の社員が息を呑む。
それは事実上の敗北宣言であったからだ。
だが社長も腐っても悪の組織の一員。
ただで負けてやるつもりはなかった。

「・・・できる限りやられたという素振りで戻って来させろ。
 勝利に溺れる奴らにこの施設ごと私の怒りをブチまけてくれる・・・!!」
「・・・・・・・・・」

悪党の意地を見せようと怒り狂う社長の様子を、開発部部長は相変わらずの冷静さで眺めている。
彼が心中で何を考えているか。
この時点で彼の考えに気づくものはまだ誰もいなかった。

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