世界の中心で平和を叫ぶ。 89
・・・とは言うものの、正直足止めの手段もそろそろなくなりつつある。
何しろ啓太は夢の安否が気にかかって仕方がないのだ。
(夢さま〜!急いでくださいぃ〜っ!)
(もうそろそろ限界です〜ッ!)
鈴と空が聞こえるはずもない心の叫びをあげたその時であった。
「啓太さま!お待たせいたしました!」
「きゃあっ!?」
先に侵入して暴れまわっていた夢が帰還を果たしたのであった。
それに驚いたのは一般人の啓太。
夢のことを心配していたとは言え、フェラ○オ真っ最中のところを見られたのだ。
啓太にしてみれば、母親に隠し持っていたエロ本読んでいたところを見られた以上に恥ずかしい。
しかしそういった常識を持ち合わせていない3人はきょとんとするばかりだ。
「・・・?啓太さま、どうかなさいましたか?」
「ど、どうって・・・!」
「鈴!空!私がいない間、啓太さまに何かあったのか?!」
「「い、いえ!私たちは何も!!」」
「・・・も、いい」
あまりに的外れなやりとりに、啓太は説明することを早々にあきらめた。
怪人トリオは怪訝な顔をしていたが、事態が事態だけにすぐに気を取り直して本題に入った。
「啓太さま、お待たせして申し訳ありませんでした。
啓太さまの安全が確保できましたので、どうぞ中にお入りください」
「・・・あ、ああ」
啓太の顔に緊張が走る。
いよいよ啓太が夢の『作戦』とやらの役に立つ時が来たのだ。
「そんなに緊張なさらないでください。
啓太さまのお仕事はそんな難しいことではございませんから」
主の緊張を感じ取った夢はそう言ってくれるが、啓太の緊張は取れることのないまま、敵組織『レフトファン』の施設内へと入っていった。
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その頃、レフトファンの指令室では。
反乱軍の予想外の善戦ぶりに慌てふためいていた。
「くそっ!一体どういうことだ!?
敵は学習教育の済んでいない新兵ばかりではなかったのか!?
なぜろくに戦い方も知らないできそこないどもに私たちが苦戦するんだ!?」
劣勢を強いられた社長は、怒りと焦りから思わず机をドン!と両手で叩く。
それは組織の頂点に立つ男だからこそ理解できない事態であった。