世界の中心で平和を叫ぶ。 83
彼らとて野心はある。
いや野心があるからこそ、悪の組織にいると言うべきか。
そんな人間たちにとって、それは確かに魅力的な言葉であった。
「できれば生け捕りにしたかったものですから、懲罰覚悟で数だけそろえて襲わせたのですが・・・。
やはり廃棄ナンバーではデータと取るくらいにしか使えませんでした」
「・・・もったいぶった言い方はやめたまえ。
要はあのサンプルを生け捕りにするだけの戦力がほしいのだろう?」
「いいえ。事ここに至ってはそのようなことを言える場合ではないかと」
「・・・?どういうことだね!?説明したまえ!」
「それは・・・」
ドゴォン・・・!!
「「!?」」
開発部部長が口を開きかけたその時、暗闇に覆われた部屋が大きく揺れた。
突然の出来事に、いち早く対応したのが警備部の部長であった。
彼はすぐさま内線を通じて事態の把握に取りかかる。
「おい!今の地震は何だ!?何があった!?」
『た、大変です!調整中の怪人や戦闘員が暴走しております!』
「何だと!?」
『げ、現在事態の収拾に当たっておりますが、数が多く、我々では食い止められません!
至急、応援を願います!』
「くっ・・・!開発部!貴様いったい何をしていたぁっ!?」
あまりにつたない失態に、警備部の部長は怒声を上げた。
しかし開発部部長は顔色1つ変えない。
「・・・来ましたか」
「何だと!?」
「仮にも我が社の機密情報を持っている相手です。
我が社の位置をつかんでいてもおかしくないでしょう?」
「き、貴様ぁ・・・っ!!」
開発部部長は警備部に見向きもせずに言葉を続ける。
「社長。あなたにたった1人の怪人にここまでやれると想像できましたか?
私がそれを言ったところで信じましたか?
今となっては結果論に過ぎませんが、敵はそれほど危険な存在なのです。
どうかご理解のほどを」
「・・・・・・・・・」
重く、長い沈黙。
部屋の周囲では事態を収拾しようと、重役たちが動き回っている。
なのに社長と呼ばれた男と開発部の部長だけ違う場所にいるかのようだ。
「・・・・・・今は事態の収拾が先だ。
君の処分は後回しとする」
社長はそれだけ言うと、何人かの部下を引き連れて暗闇の部屋から姿を消した。
このとき、開発部部長は自分の命が助かったことを悟り、思わず安堵のため息をつくのであった―。