世界の中心で平和を叫ぶ。 9
「い、いや間違っていないけど・・・。
ど、どこでそんなことを・・・?」
うわ、驚きのあまり自分の性癖をぶっちゃけやがったよ、この主人公。
そんな願望があったのも驚きだが。
「さ、先ほどのキスでDNAデータを
マスター登録させていただいたときに・・・」
「も、もしかして他のこともいろいろわかっちゃたりする?」
「は、はい。啓太さまのご趣味から生い立ちまでたいていのことは全部・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
長い沈黙の後、主人公の悲しい叫びが放たれた。
「うおおおおぉぉぉっ!!!!」
恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして狂乱する主人公。
おそらく数ある小説の中でもここまで恥ずかしい思いをした主人公はそうはいまい(まともな人格者限定)。
ちなみに啓太たちのいる部屋は完全防音のため、悲痛な叫びは外に漏れていない。
地球の技術は日々進歩しているのである。
「だ、大丈夫ですか、啓太さまっ!?
お気を確かに!?」
啓太をこんなにした諸悪の根源は、主の狂乱っぷりに驚き、それを止めようとするのに必死であった。
啓太が落ち着いたのは、それからしばらくしてからのことだった。
「ううぅ・・・」
「も、申し訳ございません、啓太さま。
どうかお許しを・・・」
ようやく主の狂乱の理由を知った少女は、何とか立ち直ってもらうべく、ひたすら謝り倒していた。
しかし心身ともに傷ついた主人公を立ち直らせるのはまさに至難の業だった。
そこで怪人少女は一計を案じた。
押してダメなら何とやら、である。
「啓太さま、失礼しますっ!」
ムチュッ!
少女は一応断りを入れると、いきなり啓太の唇を奪った。
ムードもへったくれもない、ただ唇を押し付けるだけの強引なキス。
「・・・・・・ッ!?」
しかし年齢=彼女イナイ歴の童貞啓太を起動させるには十分な衝撃だったようだ。
「申し訳ございません、啓太さま・・・。
啓太さまを目覚めさせるためとは言え、私のような
醜女(しこめ)がキスなどしてしまって・・・。」
ブンブンっ、ブンブンブンブンっ、
そんなことはないと言わんばかりに首を横に振って否定する啓太。
顔が耳まで真っ赤なのは言うまでもない。
確かに啓太の言うとおり、怪人少女は美人だ。
さっきの変身を見せてもらわなければ、彼女が凶悪犯罪者の代名詞『怪人』だなんて思いもしないだろう。