世界の中心で平和を叫ぶ。 73
「白鳥くん、何をぼっとしている!?
急いで使える怪人、戦闘員をできる限り用意したまえ!」
「え?せ、戦闘員もですか?」
「ああ!廃棄とは言え、怪人1人を軽く倒すほどの相手だ。
こちらもそれなりの力を持って奴らを潰す!」
「は、はいっ!?」
今まで見たこともない部長の剣幕に、白鳥はあわてて手勢をそろえに部屋を飛び出す。
「・・・何としても我々開発部だけで奴らを殲滅させねばならん。
この失態を知られる前に、必ず・・・!」
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レフトファンが動き始めたその一方。
もう1つの組織が時を同じくして動き始めていた。
場所はオクトラゲソンと夢が暴れた啓太の部屋でである。
「ひゃ〜っ!真っ昼間っから派手にやらかしてんな〜!」
見るからに若そうな警官が、穴だらけになった啓太の部屋を見ながら思わずつぶやいた。
彼は近隣の住民や野次馬の通報を受け、現場に駆けつけた警官の1人である。
今頃、他の部屋では警察各員がマンションの住民の救出に勤しんでいることだろう。
「しっかし、おかしな事件ですよね、コレ。
徴兵のために怪人が事件を起こすケースはよくありますけど、たった1人でこんなマンションを襲うだなんて。
おまけに襲った本人は爆死と来ている。
これってどう思います、センパイ!」
若い警官の先には、以前夜の公園で夢を注意したあの警官が立っていた。
「どうもこうもない。おまえの思っているとおりのことだろう」
「・・・へへっ。じゃあ、うちら『正義の味方』の出番ってワケですね」
「沢渡。あまりはしゃぐな。不謹慎だぞ」
「っとと。すいません。
やっと世間の役に立てると思ったらうれしくて・・・」
沢渡と呼ばれた警官は苦笑しながら先輩警官に謝る。
しかし当の本人は彼のことなど見向きもせずに荒れ果てた啓太の部屋を見ていた。
「・・・・・・・・・」
「? どうかしたんスか、センパイ?」
「・・・いや。何でもない。行くぞ」
「あ、センパイ!?待ってくださいよ!?」
国家の治安を守る『正義の味方』。
彼らは国の平和を守るために今日も戦い続ける。
襲撃してきた怪人を撃退した危険分子の存在を強く認識しながら・・・。
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そして舞台は再び啓太たちに移る。
「・・・はい?今、何とおっしゃいましたか、夢さん?」
「はい。ですから啓太さまを襲ったバカどもを始末したいので、今から潰しに行きましょう、と・・・」
ボコッ!
「っ!?っ!?」
皆まで言わせず、啓太は夢の頭に鉄拳を振り下ろした。
夢は何が何やらわからない様子で叩かれた部分を抑えている。