世界の中心で平和を叫ぶ。 66
それはある意味、予想通りのセリフであった。
「チョウ・・・キョウ、カイシ」
しかしこの時、誰も予想だにしていなかった。
この怪人の調教に、どれだけ危険を伴うものなのかを。
さて、ここでちょっとブレイクタイム。
捕まったマンションの住人たちの調教シーンに入る前に、敵対組織の様子をごらんいただこう。
****
ダンッ!!
「部長!どういうことですかッ!?」
こちらは人身売買組織『レフトファン』の開発部。
ただいまこちらでは、刺客として送り込まれたあの触手怪人のことで部下が上司に抗議をしていた。
しかし悪の組織だというのに、そんな雰囲気は全くない。
その部屋はまるで病院のVIPルームのように整えられていて、およそ怪人を作る場所とは思えない。
悪の組織とは言え、所詮は中級の金儲け組織ということか。
悪の組織なんだから、もっとそれらしい美学を持ってほしいものだ。
例えばおどろおどろしいプラントとか、ボンデージルックの女司令官とか。
「何がだね、白鳥くん?」
うわ、コードネームすらないの?人身売買なんて非道なことやってるくせに!
「とぼけないでください!
脱走したスイートホルスタインの確保に、あのオクトラゲソンを送り込んだそうじゃないですか!?」
オクトラゲソン?それがあの怪人の名前か。
しかし触手使うからってオクトパスのオクトを入れるセンスはどうかと・・・。
「それが何か問題があるのかね、白鳥くん?」
「問題?問題なんて山積みじゃないですか!?
アレはあまりに危険すぎて封印されたロストナンバー(廃棄怪人)じゃないですか!?」
・・・ロストナンバー、ねぇ・・・。
でも触手を生やして女を複数縛り上げたくらいじゃ、危険視される理由には・・・。
「忘れたんですか!?調教実験、モルモット50体が全員発狂、ショック死で廃棄処分になったことを!!」
「わかっている。それがどうしたというのだね。スイーツ・ホルスタインはまた造ればすむ。だがあれを他組織に奪われたらどうなると思うかね?」
「そ、それは・・・模造品か改良型を出されて我々の商売上がったりに・・」
「そうだ。それとこの映像を見たまえ。」
彼らがプロジェクターに眼を向けると、そこには、ようやく反撃に転じつつある夢の姿があった。」
「オクトラゲソンの視覚データを転送したものだ。あいつらのそばに怪人がいる。これはどういうことだと思うね?」