世界の中心で平和を叫ぶ。 61
「む・・・そうだな。こうして議論しててもいい案が出るわけでもないし(夢)」
「じゃあ、まずはこんな服なんてどうかしら、空ちゃん?(鈴)」
「お、ずいぶん動きやすそうな服だな。どれ、私に着せてみろ(夢)」
「あっ、夢さまずるい!(空)」
「早いもの勝ちだ。・・・ん?これ、ずいぶん小さいぞ?
この・・・ふんっ!(夢)」
「あーっ!夢さま!何てことをっ!?(空)」
ん?何?今度は何をやらかしたの?
何か『ビリッ!』とかいう音が連続して聞こえたけれどっ!?
それも連続でっ!
「こ、この服全部、啓太さまからのいただきものなんですよ!?(鈴)」
「だ、大丈夫だ。ね、ネットではこういう着方もあると読んだことがある!(夢)」
「夢さま、声上ずってますよ・・・?(空)」
「やかましい!やばいと思うんだったら、おまえらも啓太さまに気に入られるような服を選べ!(夢)」
「夢さま、それはないですよ!(鈴・空)」
・・・それにしても、この声が啓太に丸聞こえだということに気づいていないのだろうか?
まあ、アパートの1部屋1部屋の防音が完璧で、部屋の中の防音はおざなり、なんて思いつかんかもしれんが。
おお?啓太が、3人の話を聞いて赤くなったり青くなったりしてる。
でも、盗み聞きしているとは思われたくないのか、ドアの前を行ったり来たりしとる。
さて。啓太が悶々としている間に、読者諸君にちょっと見てもらいたいものがある。
ちょうどこの近くに来ているようだから、ご覧になっていただこう。
それは昨夜夢が何やら悪だくみをしていたあの公園にいた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
それは見るからに怪しさの漂う光景だった。
もうすぐ夏だというのに、それはボロボロの大きな布をまとって歩いているのだ。
顔を見ようにも、うつむいているせいで顔すらよく見えない有り様だ。
しかもそれの歩いた後には、やけにぬめった感じの液体が残されている。
いかにも私は怪しい人間です、と言わんばかりの様子に、周囲の人間は誰もそれに近寄らない。
とは言え、それを放置することもできず。
周囲の人間たちは警察はまだ来ないのか、早くいなくなってくれとボヤき、ささやいていた。
そんな時、ようやく待望の警官が自転車に乗って現れた。
「ちょっとそこのキミ!待ちなさい!」
警官が見るからに怪しい不審人物に呼びかけるが、本人は気づいてないのか完全に無視。