世界の中心で平和を叫ぶ。 56
「お母さん、心配しすぎよ?
啓太さま・・・じゃなかった、啓太さんが私たちを置いてどこかに行くわけないじゃない」
少々呆れた様子で鈴をたしなめるのは空。
3人の中でもっとも小柄で若い彼女は、その若さを武器にするかのように、カワイイ系の服を着ている。
しかし150センチの足らずの身体にEカップというアンバランスさが、カワイイ系ではまずありえないセクシーさを演出している。
ちなみに空は母の鈴と髪の色や瞳の色が違う。
母の鈴は緑色の腰まであるストレートヘアに緑の瞳だが、娘の空は背中まである緑がかった黒髪に漆黒の瞳だ。
おそらく、父親となった男の血によるものだろう。
「・・・・・・・・・・・・」
ふとまわりを見回せば、嫉妬と羨望の視線がちらほらと。
さらにそのまわりには、とびきりの美人である3人を狙う男どもが。
くたびれたGパンに伸びきったTシャツ姿でも通行人の目を引いたのだ、帰りはこんな視線をもっと浴びることになるのだろう。
啓太はそう思うと、うれしさ3割、恥ずかしさ7割の心境で悩んでいた。
・・・読者諸君、ちょっと失礼。・・・啓太くん?
「な・・・何?」
自分がどれだけ恵まれた環境にいたか、理解できたかね?
「・・・これ以上ないというくらいに。
もしかしてオレ、一生分の幸運使っちゃってます?」
安心せい、まだ使い切っておらん。
それより、今のうちに十分この視線に慣れておけ。
この後、いろいろ大変な目に会うことになるからな。
「うん、わかった・・・って!
ちょっと待て!何だその『これからもっとすごいことになります』的な言い回しわっ!?」
どの道、人身売買組織にケンカ売るんだから、囲う人数はもっと増えんのは当然っしょ?
それとな、大変な目に会うのはそのことじゃないから。
主人公税と思って、うれしはずかし、おいしい思いしときなさい♪
「ちょっ、何だその『主人公税』って!?
あっ、コラ待て、逃げんなーッ!?」
こうして啓太は主人公として第一のオイシイ試練に挑むのであった、マル。
「だーかーらーッ!?人の話を聞けーッ!?」
「・・・啓太さん?誰と話しているんですか?」
天の声を追いかけようとする啓太を止める空。
「あっ!?いやそのっ?なっ、何でもないんだ!
そっ、それより買う服は決まったのかな?」
おお!しどろもどろになりながら、何とか軌道修正しやがった。
それにしても強引な。
だが、意外と効果はあったらしく、女怪人たちは大きく動揺した。
「い・・・いえ、それがまだ・・・」
「いろんな服があって、どれを選べばいいのか・・・」
「も、申し訳ございません・・・」