世界の中心で平和を叫ぶ。 50
「もっ・・・申し訳ございません!ぼっ・・・暴走した商品たちの数がことのほか多く・・・!」
「だから商品の流出を防げませんでした、かな?」
「っ!!」
別の上役たちの言葉に、男は思わず言葉に詰まる。
助かりたい一心で出た言葉に、男は後悔せずに入られなかった。
「暴走を防ぐために不良品どもを処分したことは評価の対象ではあるが・・・」
「結果逃がしてしまっては元も子もありません、よねぇ?」
「イヤ待て。暴走したとは言え、大量の商品を傷物にしたことは問題ではないのか?」
「いやいや、そもそも商品の逃亡を許すほど、調教に失敗したことが問題ではありませんか?」
「・・・・・・!!」
そんな、と叫ぼうと男が立ち上がる。
しかし次の瞬間、いつの間にか背後に立っていた警備部の連中に脅され、止められた。
刻一刻と悪くなっていく状況に、男は考えうる最悪のシナリオを想像せずにはいられなかった。
しかし現実は男が考えている以上に残酷であった。
「・・・諸君。議論も白熱してきたところで、そろそろこの男の処分を決定したいのだが?」
ざわっ・・・!
たった1人の男の言葉に、周囲が一斉に反応する。
今まさに裁かれようとしている男でさえも。
ついにやってきた運命の時に、男は身体の震えを止められずにいた。
「それでは採決を取る。
大切な商品を逃がし、あまつさえ我が社に多大なる損害を与えたこの無能者をいかにすべきか?」
「廃棄」
「リサイクル」
「再利用」
「リサイクル」
「使い捨て」
暗闇の中から、男の上司たちの判決が下る。
しかし出された判決は『廃棄』『リサイクル』などゴミの分別のような言葉ばかりで、とても男の処罰を決めているとは思えない。
それなのに男は告げられる言葉に青い顔をますます青く染め上げていく。
「廃棄が1、リサイクルが3、使い捨てが1。
以上によりこの無能者はリサイクル処分とする」
「ヒッ・・・!?お、お待ちください!
どうか・・・どうか私に名誉挽回のチャンスを!」
男にとって最も避けたかった判決を前に、彼は必死の抵抗を試みた。
「しょっ・・・商品がどこに逃げたかはわかっております!
今ならばまだ事態の収拾は十分に可能です!
ですから!どうか、この私目に!最後のチャンスを!」
「ならん」
男の必死の抵抗も、たった3文字の無常な言葉で打ち切られた。
「事態の収拾などおまえごときがいなくても何とでもなる」
「むしろあなたのような無能者がいてもらって困るのですよ」
「貴様の替えなどいくらでも利く。うぬぼれるな」
「あなたの考えなどとうにお見通しなんですよ」