世界の中心で平和を叫ぶ。 45
「でも何であんなに怒られたんでしょう?
ちゃんと本で調べたのに・・・」
そう言いながらNA−P6931は資料を手に取る。
本の表紙にはいかがわしい絵に『正しい奴隷の育て方』と書いてある。
どうやら啓太秘蔵のエロ本を漁って得た知識らしい。
「知るかっ。啓太さまの好みに合わせてやったのに、怒られたんだぞ?
こっちが知りたいくらいだっ」
摂取したDNAデータから啓太の好みを知り尽くしている夢が憤慨して言う。
そーゆー他人に見られたくないところまで見ているところが、怒られる原因じゃないかと私は問いたい。
「夢さま、落ち着いて。
この中で一番啓太さまのことをわかっておられるのは、夢さまなんだから。
まずどんなときに喜ばれたり怒られたりするのか、考えていきませんか?」
NA−V5413の提案を元に、徹底的に啓太の好みに対する議論が始まった。
ありとあらゆる状況を整理し、分析する。
さらに夢が今まで外で得た知識や、部屋に転がっている資料(エロ本や雑誌など)から啓太の性格や好みを細かく調べる。
・・・そんな難しく考えないで、手っ取り早く啓太に謝るとか、何が悪いか聞くなりすればいいと思うのだが。
怪人という存在は姿形だけでなく、考え方も人間のそれとは異なるのだろう。
お?どうやら結論が出たらしい。
「・・・よし!これなら啓太さまもお喜びになろう!」
「そうですね、これなら・・・」
「ただいまー」
「「「!!」」」
結論が出たちょうどその時。
啓太が外出から帰ってきた。時間にして1時間ほど。
お昼までを言っていたわりにはずいぶんと早い帰宅であった。
「け・・・啓太さま、ずいぶんと早いお帰りですね?」
「うん?まあ、大した用事でもなかったんでな。
おまえらがまた変なことしないように、急いで帰ってきたのさ。
・・・ん?3人ともそんなとこに固まって何やってんだ?」
「い・・・いえ、別に・・・」
愛しい主人に役立たずと言われて、軽く凹む夢とNA−P6931。
それを見て娘のNA−V5413は思った。
(わ、話題を変えなければ!それもできるだけ朗らかな話題に!)
と。しかし一日のほとんどを啓太とすごしている彼女らにとって、それは意外な難問であった。