世界の中心で平和を叫ぶ。 46
必死に話題を探していると、出かけるときには持ってなかった紙袋が目に映った。
「け・・・啓太さま?それ、何なんですか?
食料品とは違うようですが・・・」
「ああ、これ?」
啓太はそう言うと、紙袋の中から1冊の本を取り出した。
本の表紙には『赤ちゃんの名前の付け方大図鑑』と書かれている。
・・・って、
『ええっ!?』
啓太以外の全員(天の声たる私も含む)が、一斉に驚きの声を上げる。
・・・ん?『啓太以外の全員』?
「ちょ・・・ちょっと待ってください、啓太さま!」
「うおっ!?」
夢が今までにない迫力で啓太に詰め寄る。
「ど、どういうことですかっ!?
1番の従者である私を差し置いてコイツらを妊娠させるなんてっ!?」
「に、妊娠!?」
・・・いや、そんな本買ってくればそれくらい考えるって・・・。
3人が驚いているところから見ると、どうやら違うようだけど。
しかし天の声の聞こえない3怪人は、そんなことにすら気づかない。
「ああ・・・。私が啓太さまのお子を授かるだなんて・・・♪
なんて素晴らしい・・・」
怪人親子の母、NA−P6931はうっとりしながら自分の下腹部をさする。
「ちょっ!?お母さん!?そんなワケないでしょ!?
怪人である私たちがそう簡単に妊娠するハズが・・・!」
「NA−P6931!きっさっまぁ〜!
よくも私を差し置いてぇ〜っ!!」
「ゆっ・・・夢さま!?落ち着いてください!
ああ、変身するのをやめてくださぁ〜い!」
「ゆ、夢!?何だか知らんが落ち着け!
俺の家を殺人現場にするんじゃないッ!?」
妊娠したと誤解するNA−P6931に激昂した夢が、殺気を振りまきながら怪人化した右手を振りかざす。
それに気づいた啓太とNA−V5413があわててそれを止めに入る。
「ああ・・・♪啓太さまの子供・・・♪」
「イヤ、気づけよ、今の状況!?」
怒り狂った夢とトリップしているNA−P6931が正気に返ったのは、それから30分後のことだった。
「私たちの名前を変える?」
「ああ。いつまでもNA−P6931とかNA−V5413じゃかわいそうだろ?
つーか、そんな名前だと呼びにくいし、まわりから変に思われるからな」
それがあの命名大図鑑を買った理由であった。
作者としても、いちいち怪人親子の名前を書くのは大変なので、これはうれしいお話だった。
啓太、GJ。
「それをどこの誰かが盛大に勘違いしてくれやがってよ・・・!」
「あ、アハハ・・・」
「も、申し訳ありませんでした・・・」
謝り倒す夢とNA−P6931の視線の先には全身傷だらけの主が憮然と座っていた。