世界の中心で平和を叫ぶ。 41
ちなみに夢の作戦の詳細についてはまだ伏せさせてもらう。
カンのいい読者はすでに気づいているかもしれないが、それは言わないでいてほしい。
ピッ、ピピピピ・・・
公園に敷き詰められた端末を通じて、さまざまな情報が夢の頭脳に流れてくる。
今、彼女が調べているのは3日後に壊滅する予定の人身売買組織『レフトファン』についてだった。
セキュリティはなかなかのものだったが、夢にとっては部屋にかけられたカーテンみたいなもの。
あっさりと突破して、好き放題に情報を漁っている。
(ふむ・・・。悪の組織なんて言うから、どれだけ手ごわいかと思えば・・・拍子抜けね。
むしろ、これで悪の組織を名乗ってることのほうが驚きだわ)
夢は呆れたように言う。
しかし・・・本当にそうだろうか?
まがりなりにも悪の組織なんだから、そんな簡単に情報を漏らすようなことはないと思うのだが。
まして今見ている内容は、組織の重要機密。
それだけ夢の能力が突出しているということか・・・?
「・・・!!」
その時だった。夢がネットワーク内に侵入者を感知し、猛烈な勢いで端末を体内にしまい始めた。
「だれかそこにいるのか?」
甲高い金属のこすれる音、そして闇夜に浮かぶライトの光と共に侵入者がやってきたのは、糸をしまい終えた直後のことだった。
(・・・パトロール中の警察官、か)
やってきたのは自転車の乗った中年の、やや太目の警察官だった。
夢はやってきた侵入者の正体を知るなり、すばやく無害な一般人を装った。
「何だ、君は?こんな時間に何をしているのかね?」
「いえ、夜の散歩の途中ですよ。
おまわりさんこそこんな時間にパトロールですか?」
「こんな時間だからこそだよ。
危ないから、散歩はやめて早く家に帰りなさい」
「大丈夫ですよ。この辺は治安、いいですし・・・」
町の治安が危ないこと、怪人親子を拾って持ち帰っておきながらよく言う女だ。
彼女の性格からして、無知を装って情報を仕入れようって腹か?
しかし夢のもくろみはもろくも崩れる。
「いいから早く帰りなさい!
危ない目に遭ってからじゃ遅いんだぞ!?」
と、警官を怒らせてしまったのだ。
これ以上はよけいなトラブルを引き起こしかねない。
そう判断した彼女は、すばやく撤収することにした。
「わかりました。すぐに帰ります。どうもすみませんでした」
「いや、わかってくれればいいんだ。
遊びたい気持ちはわかるけど、気をつけてね」
「はい、それでは失礼します」
夢が速やかにこの場から逃れようとしたその時だった。