世界の中心で平和を叫ぶ。 5
2人の交じり合った唾液は橋となり糸となり、やがて切れて消えた。
彼女は快感覚めやらぬ啓太青年から少し離れると、まるで中世の騎士のように片ヒザをついてこう言った。
「乱宮啓太様。私目を蘇らせていただき、誠にありがとうございます。
このご恩に報いるべく、本日これより、全身全霊をもってあなた様にお仕えさせていただきます。
この世の富と栄光の全てを、あなたの、ために」
悪ふざけやキ○○イなどの低俗な邪推を許さない確固たる意思を持って誓いを述べる彼女は美しく、それまで快楽の世界をさまよっていた啓太を一瞬にして現実世界へと連れ戻した。
これが物語の主人公、乱宮啓太とキーパーソンである
名も知れぬ少女との記念すべきファーストコンタクトであった。
とは言え、見ず知らずの美少女にいきなりお仕えしますなんて言われてもワケがわからない。
気絶してるのをいいことに自宅に連れ帰っておいて、とも思うが。
・・・つーか、これ官能小説なんだからさっさと話進めてヤッちまえばいいものを・・・。
これだからまじめしか能のない童貞君は・・・(ため息)。
「やかましい!こっちにはこっちの都合ってモンがあるんだ!
黙ってナレーションやってろや!」
黙ってどうやって話を進めろと?
どうやらかなりパニくっているようだ。
仕方ない。ここは正体不明の美少女君を使って一皮もニ皮も剥いてあげようじゃないか!
ああ、主人公思いの作者だなぁ!
よし、では早速話を進めよう。
「啓太さま?先ほどからいったいどなたと話してらっしゃるのです?」
作者(ナレーター)の存在がわからない名も知れぬ少女はキョトンとした顔で啓太を見る。
神(作者)に口答えするからだ。いい気味である。
「い、いや、何でもない。そ、それより!
さっきから『蘇った』だの『お仕えする』だの、いったいどういうこと!?」
おお、無理やり話の方向を変えてごまかした。
しかし少女のほうはキョトンとした表情を変えずに答える。