世界の中心で平和を叫ぶ。 39
「お許しくださいまして、真にありがとうございます。
つきましては啓太さまに1つお願いがございます」
「な、何でしょう?」
あまりの出来事に言葉が敬語になってしまう啓太。
お〜い、しっかりしろー!!
「私ども親子、啓太さまに全てを捧げとうございます。
心も体も、魂さえも何もかも」
「た、たましいぃっ!?」
「はい。子々孫々に至るまで、どうか私たちの全てをお受け取りください」
ごくり、と無意識につばを飲み込む。
(こ、この親子2人が俺のモン・・・マジ?)
あまりにオイシすぎる話に固まる啓太。
そこであることを1つ思い出す。
夢が同じようなことを言った、あの時のことを。
啓太は確認のために震える声で尋ねた。
「も、もし、いらないって言ったら・・・?」
「私どもは道具。もし不要であるならば・・・」
「・・・啓太さまの迷惑のかからないところで果てるだけでございます」
「!!」
啓太は『やっぱり!』と叫びたいのを何とかこらえる。
今、彼が何を考えているか、天の声たる私にはよくわかる。
おそらくこう考えているのだろう。
(なんで怪人ってヤツはこうも簡単に命を捨てられるんだ)
と。無理もない。
彼女たち怪人は人間とあまりにかけ離れた世界に生きているのだから。
それを一般人の啓太に理解しろっていうのは無理な話だ。
「道具である私たちが、このようなお願いをしてはならないことなど重々承知しています」
「ですが・・・!商品として生きてきた私たちには、他に方法が思いつきません・・・!
どうか・・・どうか、私たち親子、お受け取りください!」
顔を床にうずめんばかりの勢いで頭を下げる怪人親子。
これが怪人の世界の礼儀なのかもしれないが、もうちょっと啓太のことも考えてやってほしい。
ホラ、この雰囲気のせいで断るに断れなくなっとる。
「〜〜〜〜〜っ、わ・・・わかった!わかったから!
もうそんなにかしこまらないで!」
「・・・!それでは・・・!」
「あーもー、ご主人様でも何でもなります!
だから死ぬとかそーゆーのはヤメテ!」
「・・・〜〜〜っ、あっ・・・」
「「ありがとうございます、ご主人さまぁ〜ッ!」」
感極まった親子は、涙をポロポロこぼしながら啓太に抱きついた。
恩を返したいという思い以上に、個人的な思い入れがあったのだろう。