世界の中心で平和を叫ぶ。 30
「なっ・・・んでこんな・・・人間が・・・どうしてこんなこと平気で・・・!?ウッ!?」
気持ち悪さのあまり、吐き気をもよおす啓太。
「このまま放置していれば、嫌でもこの町でこの光景が繰り広げられることでしょう。
それに・・・」
そう言うと、夢は玄関に向かい、その扉を開けた。
「・・・お待たせしました。どうぞこちらへ」
いつの間にか来客があったらしい。
夢は来客を招き入れると、そのまま茶の間まで通した。
入ってきたのは小さい子供と若い女性。
姉弟なのだろうが、なんでこんなときに?
混乱しっぱなしの啓太に夢がとどめをさす。
「・・・彼女らはその報告書の事件からの生還者です」
夢は2人に座るよう、促すと話を続けた。
「彼女たち2人を保護したのは昨日の昼。
私が啓太さまのお役の立つべく、研鑽に励んでいたときに偶然出会いました。
今まで黙っていて、申し訳ございません」
「ほっ・・・『保護』?『研鑽』?
い、いったいどうゆう・・・」
ショックのあまり、事態に頭がついていかないようだ。
しかしナレーターも知らないところで勝手に話を進めるとは・・・。
全くもってけしからん!
普段ならここで説教の1つも始まるところだが、今回は事態が事態だけに、夢のほうも一歩も引かない。
「私への処罰はいかようにもお受けします。
ですが啓太さまをお守りし、かつ幸せになっていただくためには、どうしてもやむを得なかったのです。
秘密裏に修行をしたことも、彼女たちを保護したことも、何もかも」
つまり自警団のことも必要不可欠なことってことか。
・・・いいでしょ。
あー、そこで呆けている啓太クン!
悪いが話を進めてくんね?
「なっ・・・!?こ、これはアンタに関係なんか・・・!」
ないかもしれないけど。
話しだいで、この話自体を何とかすっから。
だから進めて。
「・・・詳しく説明して」
「わかりました」
天の声たる私が味方になってくれることに安心したのだろう。
啓太はようやく腰を据えて話を聞く気になったようだった。
「では私が今まで啓太さまに黙っていたことから始めましょう。
・・・私は啓太さまの所有物になったあの日から、啓太さまのお役に立つべく、さまざまなことを調べました」