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世界の中心で平和を叫ぶ。
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。 24

掃除をしようとすれば掃除機は原形を留めぬほどに破壊され、料理をしようとすれば料理を作る以前に包丁とまな板を同時に真っ二つにするほどへたくそなのだ。
ちなみにその折れた包丁の切っ先が啓太の顔を掠めたことはお決まりである。
その彼女が無事に洗濯をやりきったっていうんだから・・・。
これを奇跡と言わずなんて言おうか。

「い、いくらなんでもそれは言いすぎじゃありませんか?」

あ。
振り向けばそこには我々のあまりの言い様に、夢はひどくショックを受けていた。
両の瞳には涙を浮かべ、カラダをプルプルと震わせている。
今にも涙が流れそうな状況だ。

「い、いやっ、これは、その・・・」

啓太があわてて言い繕おうとするが、うまい言い訳ができないでいる。
こっちの声は向こうには聞こえないから心配ないが・・・。
ホント、今ほどナレーターでよかったと思ったことはないよ。

「そ、それよりなんで急に家事なんてやり始めたんだ?
 家事は俺のほうでするって言ったのに・・・」

話題を変えたか。それにしても強引な。

「今日はちょっと大事なお話があったんで手伝おうと思ったんです!
 ですから啓太さま!今すぐ話し合いをしましょうっ!」

夢はそういうなり、啓太の手をつかんで強引にリビングへ引きずり始めた。
何を『話し合う』気なのかは言うまでもあるまい。

「ちょ、痛い痛い!引きずらないで!」

腐っても怪人。見た目は女でも、男も顔負けの力で啓太はリビングに引きずられていった。
その光景は解体寸前の家畜のように見えた。
合掌。

チーン!


「自警団?・・・ですか?」

リビングに引きずり込まれてから1時間後。
啓太は夢から自警団を結成しようという話を持ちかけられていた。
え?啓太が敬語使ってる理由?
そりゃ夢の説教がものすごかったからに決まってる。
ナレーターとして最初のうちは付き合って聞いていたが、初っ端からすごかった。
泣くわわめくわ、自殺しかけるわのやりたい放題で、啓太の意見はおろか、感情をはさむ余地すら与えられなかった。
当然、私は説教開始10分にして早々に啓太を見捨てて逃げ出した。
あの時の哀れな啓太の顔は忘れられない。

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