世界の中心で平和を叫ぶ。 212
「けっ、啓太殿!?なっ、何卒っ!何卒それだけはご容赦をッ!?
け、啓太殿なくしては、拙者の存在価値がなくなってしまうでござる!!
な、何卒ご再考をお願いいたしたく!」
あまりにむごい罰に、ベンケイはあわてて上訴を申し立てる。
まさか啓太がこんなことを言い出すとは思ってもいなかったようだ。
むしろ啓太を想うがゆえに問題を起こして処刑される、悲劇のヒロイン気分を味わっていたに違いない。
予想以上の効果に、啓太は内心満足しつつ、ベンケイに反省を促していく。
「でもなぁ〜。またこんな騒動起こされても困るしぃ〜?」
「も、もう2度といたしませぬ!天地神明、この命に代えても!」
「お前を止めようとした仲間は、ケガしちゃって休ませなきゃいけないしぃ〜?」
「せ、拙者ががんばって開いた穴を埋めますゆえ!」
「基地だけでなく、町にもとんでもない被害を与えちゃったしぃ〜?」
「ぼ、ボランティアでもアルバイトでもして償うでござる!」
「ふ〜ん・・・?」
啓太は大爆笑したいのを必死にこらえながら演技を続ける。
はたから見ればバレバレの演技である。
しかし怪人の存在意義を全否定するような発言に、怪人たちは恐怖こそ感じこそすれ、演技と感じる余裕すらなかった。
啓太は笑いをかみ殺しながら演技を続ける。
「でもな〜。口だけでなら何とでも言えるしな〜」
「なっ!?け、啓太殿は拙者を信じられないとおっしゃられるのでござるか!?」
「いやいや、違う違う!
ただやるだけじゃ、覚悟の程が伝わらないって言ってんの!」
ベンケイの語気に危険なものを感じた啓太は、あわてて気色ばむ彼女を静める。
「か、覚悟でござるか?」
「ああ♪ただやるだけじゃ誰にでもできるからね。
オマエにはその覚悟を見せてほしいのさ」
「そんなの、簡単でござる。破ったときにはこの・・・」
「『命でお返しします』なんてのはナシな?
騒動の責任を取る前に、死なれたらオレが困る」
「ぐっ・・・!」
思わぬ正論にベンケイは言葉に詰まる。
さて、啓太はベンケイにどんな枷をつけるつもりなのか――?
「で、では拙者はいったい何をすればよろしいのでござるか・・・?」
「そんなの自分で考えれば?」
ピシッ!
あ、固まった。そりゃ無理もないか。
ここまで持ち上げておいて丸投げとは。
「だいたい自分で問題を起こしておいて、ヒトに聞こうってのがそもそもの間違い。
オレに必要とされたいのなら、何をすればいいのか、もうわかってるはずだろ?」
「う、うう・・・っ!」