世界の中心で平和を叫ぶ。 203
ベンケイは逃げるどころか、降り注ぐ鉄の塊の嵐に真っ向から立ち向かっていった。
空圧弾の乱射で巨大な鉄塊の弾丸を押し止め、弾いていく。
圧倒的な質量と数で押し込めようとする力。
全てをねじ伏せるかのような怪力でそれを防ぐ力。
2つの力は交じり合い、土煙の中に消えていく。
ベンケイは死んでしまったのか――?それとも・・・?
「おいッ!!今すぐ戦いをやめろッ!バルキリー!」
「「!?」」
静寂を破ったのは空より響く主の声。
振り向けば、そこにはようやく到着した啓太一行が立っていた。
それを見てあわてたのがビーストとバルキリー。
「け、啓太の大将!?」
「い、いえっ、別にコレは、そのっ」
啓太がもっとも嫌いそうなことの1つ、仲間殺しの現場を見られたと思った2人は、何とか場を取り繕おうとするが、とっさのことでうまい言い訳が思いつかない。
その時。
「啓太・・・殿?」
「「――――ッ!?」」
その声に驚いたのは他ならぬバルキリーとビースト。
当然だ。あの攻撃を食らって生きていると考えるほうがどうかしている。
最悪の状況を回避できたことを2人は喜ぶべきなのかは非常に微妙だが。
土煙の中から現れたのは血まみれの手。
ついで現れたのは血まみれのゾンビ状態のベンケイだった。
「啓太・・・どの。啓太、殿ぉ・・・っ」
ベンケイは最愛の主を探そうとその手を虚空に泳がせ、前に歩こうとして・・・倒れた。
「ベンケイっ!?」
驚いた啓太があわてて助けに行こうとするが、巨人と化したバルキリー以外の面々に引き止められた。
「何すんだよ、おまえらっ!?このままじゃベンケイがっ!?」
「ダメです、啓太様っ!?」
「今のベンケイ様は何も抑えるものが何もない状態なんですよ!?
そんな状態でもし力いっぱい抱きしめられたら!」
「バルキリー!おまえの手でベンケイを拘束してくれ!」
「お、おまえら・・・っ!!」
「大将!お願いだからここはこらえてくれ!
今のアイツはホントにヤバいんだっ!!」
暴れる啓太を怪人の面々が取り押さえる中、バルキリーの操る巨人の腕がゆっくりとベンケイの身体を覆い隠そうとする。
しかし次の瞬間、爆音とともに巨人の手から力が抜け、ベンケイの身体を包み込むどころか、瓦礫の山にうずめてしまう結果となってしまった。
「べっ・・・ベンケイぃいいッ!?」
絶叫。怒りの形相で啓太がバルキリーを見上げると。
そこには豆粒ほどの小さい人影によって頭の部分を破壊された巨人の姿が目にあった。