世界の中心で平和を叫ぶ。 182
(・・・そういや、他の囮チームの連中はいったい何をしているんだろう?
夢たちが来たもんだから、てっきりこっちに来るかと思ってたんだけど・・・?)
全員で来られても困るが、来ないと来ないで不安もある。
また何か問題を引き起こしてやいないだろうな、と一抹の不安を覚えつつ、啓太は雅たちから渡された料理を運んでいくのだった。
――――
啓太たちが食事の準備を始めた10分ほど前。
囮役を買って出たビーストたちは、一触即発の事態に陥っていた。
「これはこれは驚いた。
まさかこんなにも早く我々が正義の味方に見つかるとはな」
「・・・バカにしているんですか?
そんな見るからに怪しい格好をしてたら、イヤでも目に付くでしょう!?」
正義の味方を名乗る中学生くらいの少女たちは、怒り心頭といったご様子で反論する。
ちなみに正義の味方に見つかったのはほんの数分前のことだ。
クロックはビーストの反対を押し切って、変装もしないで堂々と町の中を徘徊した。
執事服を着たウサミミ女だけでも目立つというのに、拘束具を身につけた巫女装束はあまりにも不審すぎた。
行く先々でモーゼの十戒のような行進を繰り広げ、何回か通報されたのであろう警察官に何回か追い回された。
そしてその挙句に現れたのが正義の味方を名乗る、この3人の中学生たち。
彼女らは一般人を装い、逃げるように通り抜けるとき、クロックに何事か言ったらしい。
クロックは喜び勇んでこの廃工場までやってきたというわけだ。
「当然だ。見つかるように行動していたのだからな」
「・・・人をバカにするのもいいかげんにしなさいよ、アンタ!
私たちをガキだと思ってると痛い目見るわよ!?」
「話が早くて助かるな。
それでは早速『痛い目』とやらを見せてくれないか?
早く組織に帰ってこなさなければならない仕事が山ほどあるのだ」
「・・・ッ!!」
クロックのあからさまな挑発に堪忍袋の緒が切れた3人は、懐からブローチのようなものを取り出し、叫んだ。
『エレメントバトルドレスモード!メイクアップ!』
瞬間ブローチが光り輝き、中から帯状の何かが少女たちの身体に巻きついていく。
光が止んだとき、そこには各々武器を構えた3人の正義の味方がその姿をあらわにしていた。