世界の中心で平和を叫ぶ。 180
「京子さん、好き嫌いとかあります?」
「あらあら、そんなに気を使わなくてもいいんですよ?」
「問題ない。さっき啓太と一緒に買い物から帰ってきたばかりだ。
啓太のお墨付きをもらったおいしい料理をぜひ食べていってもらいたい」
ピシッ・・・!
その一言で再び夢たちの間に電撃が走る。
一瞬のことだったので、京子は見ていなかったが啓太はしっかりと見ていた。
(・・・ありゃ、『私たちの知らないところで手料理をお出ししてお褒めいただいてたの?!』なんて考えてる顔だな・・・)
そしてその推理を照明するかのように、夢たち3人も立ち上がる。
「雅さん、刀さん?この人数をお2人で作るのは大変でしょう?
私たちもお手伝いしますわ」
「いや、いい。夢たちはそこで啓太たちとゆっくりしていてくれ」
「そうですよ。京子さんを迎えに行ったばかりでお疲れでしょう?
茶の間でゆっくり休んでてくださいよ」
ピキピキッ・・・!!
その瞬間、部屋の空間は凍りつき、夢たちの笑顔がわずかに引きつる。
「い〜え〜。お気遣いなく〜。せっかくですから私たちにもお手伝いさせてくださいな〜?」
「そ〜ですよ、雅さん、刀さ〜ん。
私たちも『久しぶりに』みなさんにおいしい手料理を振る舞いたい気分なんですから〜!」
こ、怖い・・・!
それは主人である啓太も初めて見る鈴と空の怒りの表情だった。
顔は笑っているのに目が少しも笑ってない!
それどころか殺意のこもった視線でに睨み返している!
しかもさり気に『以前にも手料理をご馳走したことがあります』みたいなこと言ってるし!
「雅さん、刀さんにいいトコばかり見せられてはかないませんからね。
ここは1つ私たちも久しぶりに包丁を握るとしますか!」
夢も負けられないとばかりに明らかな宣戦布告とともに席を立つ。
ああ、かくも激しい女の戦い、一体どうなってしまうのか――!?
――――
トントントン・・・。ジャー、ジャー・・・。
「・・・・・・」
食材を切ったり焼いたりする怪人4人。
そしてその輪から外れた唯一の存在である夢が、部屋の隅っこでポツンと体育座りしていた。
その背中からは重苦しい敗者のオーラがにじみ出ており、誰一人として声をかけられずにいた。
なぜ夢がこんなところに座っているのか。
その答えは簡単。夢の料理の腕を知っている京子を除く5人が全力で夢が料理することを拒否したのである。
何しろ彼女の料理の腕前はかなりの腕前。
うかつに料理させればどんな暗黒物質(ダークマター)が生み出されるかわからない。