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世界の中心で平和を叫ぶ。
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。 176

帰ったらどんなイヤミや愚痴を聞かされるのかと思えば、イヤでも気分が落ち込むのだろう。
一方、職権乱用した張本人は、自分のしでかしたことに罪悪感の欠片も感じていない様子で、バッグからある資料を取り出す。
そこには事前に調べた啓太の母『乱宮京子』の顔写真とともに、簡単なプロフィールが添えられている。

「乱宮京子、44歳。週刊雑誌の敏腕編集長として会社に貢献・・・か。
 鈴。空。ターゲットとの接触にはくれぐれも注意しろよ」
「は、はい・・・」
「それにしても、啓太様のお母さまってずいぶんお若い方なんですね。
 30代前半って言っても通用しそうな顔立ちですよ?」

いまだ立ち直れない母親を気遣いつつ、空は資料の顔写真を見ながらそうつぶやいた。
事実、啓太の母親は異常なくらい若々しい顔立ちをしていた。
鈴も彼女に負けないくらい若々しい母親ではあるが、空を産んだ経緯や怪人であることを考えれば若々しくても不思議はない。
しかし京子の場合は違う。彼女は人間・・・天然モノである。
人間にも平均身長を大きく超える体格の持ち主や体型の持ち主がいると聞いたことはあるが、いざ実物を目の当たりにしようともなると、さすがに気にはなってくる。
夢たち怪人から見れば、京子のようなタイプの人間はとこかの組織の怪人なんかじゃないかと思っても仕方がないのかもしれない。

「ああ。開発部の連中がやたらと興味を持っていたしな。
 私も気にはなっている。だが今考えるべきはそこではない。
 いかに我々をその方によい印象で覚えていただくかだ。
 さらにそこで啓太様をうまく擁護すれば、啓太様からもより好感を持っていただける。
 絶対に失敗は許されないぞ?」
「・・・ハイっ」

その言葉に、空が力強くうなづく。
ここまで来てしまった以上、もう引き返すことはできない。
・・・というか、後でろくでもない目にあうことがわかっていて、おいしい思いもしないで帰ることなど冗談でも考えたくはなかった。

「ほらっ!母さん、しっかりして!
 ここでがんばらないと私たち、何のために抜け駆けしたのかわからなくなるよっ!?」

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