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世界の中心で平和を叫ぶ。
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。 173

「リリ…じゃない雅どうした。気に入らなかったか?」
リリスの複雑な表情をみた啓太は失敗したと感じた。
「いや…少し考えただけだ…悪くない寧ろ嬉しいよ。ただ…」
さっきまで複雑な表情だったリリス改め雅だったが、啓太が気に掛けてくれたお陰で機嫌は良くなったようだ。
「ただ、なにかあるの言ってみな。」
雅の要望を聞き入れる啓太。
「この雅と言う名前はプライベートだけ呼んで使わせてくれ。嬉しいが照れくさい。」


今まで呼ばれてきた使い捨ての道具としてではない『名前』。
それはリリス・ヴァンパイアにとってある重要な意味を持っていた。
実は彼女はレフトファンで生まれた怪人ではない。
ある組織からの脱走兵だったのだ。
彼女が目覚めたのは突然の出来事だった。
所属組織で内乱が起こり、製作途中で目覚めるという僥倖に見舞われたのだ。
生まれたばかりの彼女は、突然のことにどうしていいのかわからず、自分を守るためにそこから逃げ出した。
しかし怪人として生を受けた彼女に、世間はあまりにも冷たかった。
一般人は彼女を浮浪者と蔑み、その正体を知るや危険物として正義の味方とともにその存在を消去しようとした。
生きる目的もなく、まわりから疎まれた彼女はただひたすらに逃げ続け、たどり着いた先がレフトファンであった。
そこで彼女はレフトファンのための使い捨ての駒として生まれ変わり、人生を終えるところを啓太に救われたのである。
そんな彼女にとって、リリスとはようやく得られた大切な自分の呼び名であった。
もちろん、自分を大切にしてくれる啓太のくれた名前も同じくらい大切だ。
でもようやくもらえた自分の呼び名をそう簡単に捨てることはできなかったのである。
たとえその名前にいかな意味があろうとも。

「ん、そっか。
 まだ怪人の名前で呼ばれていたほうが、慣れてるもんな」
「あ、ああ。許してもらえるか?」
「ああ、いいよ。
 名前のほうは、これから少しずつ慣れて行けばいいしね」
「悪いな、啓太」
「いいって」

そう言って苦笑する啓太。
きっと彼は雅(リリス)の考えていることなどまるで知らないのだろう。
だが彼女は、そんな啓太に感謝を示したくて仕方がなかった。

「啓太」
「ん?」
「ありがとな」

チュッ!

「!」
「ああっ!?」

一瞬のスキを突いてのキス。
その現場を目撃したナイトメアこと刀は悲鳴を上げ、啓太は呆気に取られる。

「ま、ホントはオマエの子供を孕んでやりたいとところだが、今は時間がない。
 これで勘弁してくれ」

絶句する啓太と刀の横で来客を告げるチャイムが鳴る。
ついに啓太の母親がこの部屋にやってきたのである。

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