PiPi's World 投稿小説

世界の中心で平和を叫ぶ。
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 166
 168
の最後へ

世界の中心で平和を叫ぶ。 168

それが先ほどまでの彼女の姿である。
もちろん、拘束具は簡単に脱げるような代物でなかったので、やむなくそのまま警備部の部長を務めることとなったのだが・・・。
今、啓太への思慕の一念が、最悪のタイミングで元の姿へと戻してしまったのである。
ちなみに啓太はこのことを知らない。
夢が意図的に避けたのだ。
本来の彼女の力を知った夢が、啓太に危険が及ばないように配慮したのである。
夢がそれほどまでに恐れた怪人の本当の姿が今、明らかになった。

「さあ、お二方。今すぐ道をお開けください。
 この姿になった以上、あなた方に勝ち目はございませぬぞ?」
「い、イブ様・・・!」

予想だにしない展開に、ミラージュは気圧され、イブに助けを求める。
正直イブも恐怖を感じずにはいられなかったが・・・。
それでも彼女は言う。
命を賭けてなお、返しきれない大恩ある啓太のために。

「ダメだ。オマエをここから出すわけには行かない。
 ましてや、本来の姿となったオマエならなおさらな」
「・・・後悔、いたしますぞ?」
「くどい」

その瞬間、ベンケイの身体は消え失せ、一瞬にしてイブの前に姿を現す。

「「!?」」

怯んだわずかなスキを狙って、ベンケイのボディーブローがイブの腹部に向かって飛んでくる。
イブはとっさにかわすが・・・!

ジュギャッ!

イブの腹左半分をいともたやすく粉砕し、さらにイブ本人を竜巻に巻き込まれたかのような勢いで吹き飛ばす。
イブは悲鳴を上げる間もなく壁に叩きつけられた。

「だから、言ったでござろう?
 ・・・後悔いたす、と」
「くっ・・・。目覚めた早々からやってくれたな・・・」
「イブ様!」

すっかり観客と化したミラージュに答えるかのように、イブはよろよろと立ち上がる。
腹の左半分が失われているというのに、なんと言う生命力か。
傷口からはすでに出血すらない。
それでもなお生きているイブの様子にベンケイも表情が変わる。

「・・・その身体で立ち上がれるとは・・・。
 少しばかり驚きましたぞ?」
「オマエのバカ力には負けるよ」

イブはイヤな冷や汗をかきながら軽口を叩く。
普通なら間違いなく致命傷でありながらイブが立ち上がれる理由。
それは彼女が『軍隊怪人』であることに由来している。
怪人の素である『生命の泉』を大量に注入された彼女は限りなく不死に近い能力を得た。
それは肉体の群体化。
イブという存在は個体を表す名前ではない。
夢たちですら把握できないほどの膨大な数の怪人が合体した形を便宜上、そう呼んでいるに過ぎないのだ。
たとえ彼女を粉々にしたところで、肉片1つでも生き残ればそこから再生して復活する。

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す