世界の中心で平和を叫ぶ。 159
・・・ん?ベンケイの軍勢?
「グギョオァァアアァアッ!!」
「ひいぃっ!?」
怪物たちはベンケイたちに襲いかかるも、その不気味な牙や爪は怪人たちを傷つけることはない。
「イブ様、今ですッ!」
ミラージュに呼ばれるまでもなく、イブは両手で自分の身体を抱きしめ、前傾姿勢をとる。
すると・・・。
ゴボゴボゴボゴボゴボォッ!
イブの背中が沸騰した水のように、泡立ちながら急激な膨張を始める!
そして膨張した肉塊から鎧姿の兵士たちが出現して一斉に怪人たちに襲いかかった。
ありえない現実の連続に動きの止まった怪人たちを、イブの身体から出現した兵士たちが容赦なく打ち据えてその行動力を奪う。
「くうっ!ミラージュの幻術にイブの分身どもかっ!?」
次々とやられていく仲間たちにベンケイは思わず舌打ちをする。
・・・ちょっと待て。何でさっきからベンケイの軍勢がイブとミラージュに襲われている?
ちょっと目を離していた間に一体何があったのだろうか?
「イブ!ミラージュ!何故我らの進軍を阻むかッ!?
これは啓太さまをお守りするための、ひいては我らの存在意義を守るための行為ぞ!?」
我々第3者の疑問をよそに、ベンケイが吠える。
そこには進軍をジャマされた怒りとわずかな焦りが含まれている。
「・・・で?」
「こんな大勢で行ったらお守りするどころか、正義の味方と全面戦争になるでしょう?
大体、警備部であるあなたに、そんな権限はないはずです!」
至極正論を出されてベンケイは「うぐっ」と言葉に詰まる。
しかしそんなことはやる前からわかっている。
今さらこんなことで止まるわけには行かないとばかりにベンケイは再び吠えた。
「う・・・うるさい、黙れッ!
たとえそうであったとしても、我々にはここに留まっていられぬ理由があるのだッ!」
「いいかげんにしなさいッ!」
『ッ!?』
ミラージュの一喝にベンケイのみならず、徒党を組んでいた部下の怪人たちまでもがその身体を硬直させる。
一体どちらが部長で副部長なんだかわからない。
「くじに当たらなかったと言って、部下を扇動!
その挙句に任務の邪魔をしようとは何事ですかッ!?
仮にも啓太さまの所有物であるなら、自らの欲望くらい自重しなさいッ!」
ミラージュの気迫が押され、ベンケイに追従する怪人の何人かが腰を抜かしてその場に座り込む。
・・・それにしてもミッションに参加できなかったからの腹いせとはまたチープな理由である。
それでこの物語が最終回を迎えたらどうしてくれるのだろう?
そんな作者の思いをよそに、ベンケイが三度吠える。