世界の中心で平和を叫ぶ。 155
そして異様な雰囲気の中、啓太の組織のミッションが始まった。
リリスとナイトメア以外の連中の不機嫌オーラを感じていた啓太は、何も起こることなくミッションが始まったことに、ひとまず安堵のため息をつくのであった。
その裏で夢たちがとんでもない計画を立てていたことなど知らずに。
「う〜ん・・・」
ここは啓太の組織の基地から少し離れたところにある地下道。
そこで啓太は何十回目になるかわからないうなり声を上げていた。
「啓太さま?まだ夢さまたちのことが気になるのですか?」
「あ、いや、その・・・。・・・うん」
「いいかげんにご安心なさってください!
いくら夢さまとは言え、啓太さまのご迷惑になるようなことをするはずがないじゃないですか!?」
「う・・・うん、まぁ、それはそうなんだけど・・・」
啓太の煮え切らない態度に、ナイトメアの口調もさすがにキツくなる。
先ほどからずっとこのやり取りが続いているのだから当然と言えば当然か。
啓太はこのミッションが始まってから、ずっと夢たちのことを気にし続けていた。
リリスが抜け駆けしたというのに、それに対して抗議の騒ぎが1回だけで済んでいるという事実が信じられないでいたのだ。
まぁ、夢たちみたいに一歩・・・いや後半歩でストーカーになれるほどの執念深いヤツがたくさんいたら、それはそれで問題なのだが。
(・・・だ、大丈夫だよな?
何か変なことなんて起こらないよな?
・・・いやでも。あの時のバルキリーたちを考えると・・・。
いやいや、待て待て。夢がオレを困らせるようなことを許すわけ・・・)
今、啓太の中ではこのようなやり取りが繰り返し行われている。
無理もあるまい。
少なくとも、啓太のためならどんなことでもやってのけるような性格の夢がおとなしくしているという時点ですでにおかしいのだ。
今まで1番長く付き合っている啓太はそのことをイヤというほど思い知らされている。
まして他の怪人たちがリリスの抜け駆け発言にあれほど激怒していたのだ。
疑心暗鬼になるのも無理はなかった。
「啓太さま!いいかげんになさってください!
我々怪人が啓太さまのご迷惑になることなどするはずないでしょう!?
リリス様も何とかおっしゃってください!」
「・・・だと、いいだけどね」
「リリス様!?」
「あ、ああ。ゴメンゴメン。
私もてっきり大騒ぎになると踏んでいたものだから」