世界の中心で平和を叫ぶ。 152
チャキ・・・ッ。
ビリリッ!!
ニュルル・・・ッ、
「ふ・・・ふふ・・・。いい度胸をしてるなぁ、オマエ・・・」
「啓太さま。殺しましょう。大丈夫です。
コイツが死んでも代わりはいくらでもいますから・・・」
「リ、リリス様!いくらあなたでも、啓太さまは渡せませんっ!」
リリスのストレートな発言に、ビーストは腕をゴリラのように変化させ、ナイトメアは義手の刀に手をかけ、バルキリーに至っては髪の毛からコードのような触手を伸ばしている。
その殺気から今にも飛びかからんばかりのご様子だ。
「何を怒っている?
啓太は使い捨ての道具である私たちを大切に扱ってくれる大切なヒトだぞ?
おまえたちは啓太に幸せになってほしいと思わないのか?」
リリスの怪人としての正論に、ビーストたちは言葉に詰まる。
そう。彼女たちは怪人だ。できることなど使い捨ての駒として戦うことだけ。
しかしそれを禁止されている以上、唯一残された女のカラダを楽しんでいただくということは至極当然のことだった。
「・・・詭弁はそれくらいにしろ。
オマエは単に他の怪人たちより啓太さまに愛されたいだけだろう」
「それはそっちのことじゃないのかい、夢?
まったくお互い主想っているだけなのに、何でこんなことになるのやら。
少しはイブを見習ったらいいのにね?」
真冬に氷水をぶっかけるような不穏な空気があたりに漂う。
今まで恋愛らしい恋愛をしたことのない啓太は、恋する乙女たちの暴走を止めようとすることに精一杯。
おかげでなぜ彼女らがここまで火花を散らせているのか、いまだに理解できないでいた。
「お・・・落ち着けよ、みんな!
オレがリリスを母さんに紹介すれば済むことだろ?
そんなに殺気立つな!!」
『・・・・・・っ!!』
「ありがとう、啓太。わかってくれてうれしいよ」
啓太が事態を収拾しようと放ったその言葉に、リリスは歓喜の笑顔を浮かべ、他の怪人たちはショックと悲愴な表情を浮かべた。
「と、とにかくオマエを母さんに紹介すれば、後はうまくやってくれるんだな!?」
「ああ。それは君にかけて誓うよ。
それじゃ早速で悪いんだけど、すぐに準備に取り掛かってくれないかな。
君のお母さんをいつまでも待たせるわけには行かないからね」
こうして組織の見学会は一時中断となり。
急遽啓太たちは一般人である啓太の母への後回しに向かうこととなった。
だが啓太はまだ気づいていない。
自分が不用意に放った発言のせいで、事態は不穏な空気を漂わせていることを・・・。