世界の中心で平和を叫ぶ。 138
「・・・話せ」
「は、はい・・・ッ!」
啓太の有無を言わさぬ迫力の一言に、夢だけでなく空たちギャラリーまでもが震え上がる。
ブチキレ啓太恐怖伝説に新たな1ページが加わった瞬間である。
「お、男の怪人たちを諜報員として出したのには3つ理由があります。
1つ目は啓太さまの身の安全を守るため。
2つ目は彼らを養うだけの資金がないため。
3つ目は彼ら男の怪人たちの幸せのためです」
「・・・ちょっと待て。
1つ目と2つ目はわかるが、最後のは一体何だ?
どーして外に裸一文で放り出すことが連中の幸せに繋がるんだ?」
ごもっともな意見である。
しかし啓太は知らない。
男の怪人の悲しい宿命。それを聞いたとき、啓太は男として涙し、彼らを諜報員として放り出したことを褒め称えることになるのである。
「啓太さま。男の怪人とはご主人様のお役に立てる機械が少なく、意外と苦労されている方が多いのです。
なぜだかわかりますか?」
「・・・なぜ?」
「彼ら男の怪人は戦闘以外ではあまり重宝されないからです。
たいてい悪の組織は男所帯が普通ですから。
まぁ中には男色の趣味をお持ちの方にかわいがられるという例外もあるようですが」
その答えに啓太は露骨に嫌そうな表情を浮かべる。
男の怪人たちにDNA登録された時のことでも思い出しているのだろうか。
「さらに怪人や戦闘員は人間から見ればただのバケモノです。
ですからなかなかステキな異性との出会いなんてないんですよ。
キレイどころはたいてい上が独占しちゃってる上に、怪物じみた外見のせいで女性とお付き合いなんてできるわけないですからね」
「・・・・・・」
確かにこの組織の女怪人は全員啓太を主としてDNA登録している。
彼女らは啓太を喜ばせこそすれ、男の怪人なんて仕事の同僚にしか見られないだろう。
これでは恋愛も生まれるはずがない。
啓太は聞いてるうちにだんだん悲しくなってきた。
その原因は夢と出会うまで女と縁もなく過ごしてきた日々の辛さに他ならない。
「ですから彼らには人間への変身能力を与え、外回りの仕事を与えたんです。
もちろん必要最低限の生活はできるように配慮してますし、外で暮らしていればいい出会いもあるかと思いまして・・・」
「・・・うん。そだな。よくそこまで考えてやってくれたな、夢」
「ご理解いただけて何よりです」