世界の中心で平和を叫ぶ。 136
「ではどうぞお入りください。
おそらくカンのいい連中たちが啓太さまのご到着を心待ちにしているはずです」
「う、うん・・・!」
あえて扉を開けるような無粋なマネをせず、啓太に開けてもらうように夢は促す。
それに対し、啓太は緊張半分、期待半分で心を高鳴らせながら夢の担当部署への扉を開いた。
すると・・・。
パァンッ!パンパンッ!
「「お待ちしておりました、啓太さま!
我ら新組織の幹部の部屋へようこそおいでくださいました!」」
けたたましい音とともに啓太の到着を心待ちにしていた幹部候補の怪人たちが啓太を出迎えてくれた。
そこにいたのは啓太の予想を上回る選りすぐりの女怪人たち十数名が感情を抑えきれずに啓太に抱きつく。
女性特有のやわらかい感触と豊満な乳房に押され、啓太の顔が思わずにやける。
しかし次の瞬間、啓太と幹部怪人たちは入り口からものすごく冷たいオーラを感じた。
見てみればそこには絶対零度のブリザードの嵐が吹き荒れていた。
「「ひいぃっ!?」」
「ダメですよぉ、啓太さまぁ・・・。
組織のトップともあろうお方がそんなに甘い顔をしちゃあ・・・」
「はっ、はいっ!?」
反論を許さぬオーラに押され、啓太はあわてて怪人たちの囲みから脱出する。
「まったく・・・!おまえらも就業中だろう!?
私利私欲のために勝手な行動を取るんじゃないっ!」
「「はっ、はいっ!!申し訳ありませんっ!?」」
言うだけ言って少し落ち着いた夢は、軽く幹部たちを紹介する。
「では改めまして。彼女たちが新組織の各部署をまとめてくれる幹部候補たちです。
詳しい自己紹介は彼女らの担当部署でしますが・・・。
なかなか壮観な眺めでございましょう?」
「は、はい・・・!」
まだ恐怖冷めやらぬ啓太は、直立不動、敬語で応対する。
夢が怒っていたのは部下が啓太に対して不敬極まりない行動をしたからで、嫉妬で怒っていたわけではないのだが・・・まあ、仕方ないだろう。
「ホントはここでみなを紹介したいところなのですが・・・。
各施設の見回りもあることですし、お楽しみは後にとっていただきましょうか」
その言葉に幹部候補たちからあからさまな不満のオーラがにじみ出る。
そりゃそうだろう。
並みいるライバルたちとの戦いを潜り抜け、ようやくご主人様の啓太とお近づきになれるというのに、そのチャンスを奪われたら誰だっておもしろくない。
それでも不満の声が上がらないのはそれだけ夢が悪阻らしいということなのだろう。