世界の中心で平和を叫ぶ。 116
鈴と空だ。すでに啓太の寵愛を受けている彼女たちにしてみれば、ライバルを増やす事態でしかない。
2人は、すばやくアイコンタクトを送ってライバルたち牽制する。
「いけません!速やかに啓太さまを安全場所にお連れするべきです!」
「そうですよ!大事なご主人様を危険にさらすなんて、私たちが許しません!」
「そ、空?!」
『ご主人様』発言に驚いた啓太があわてて声を上げるが、時すでに遅し。
ギャラリーの視線はさらなる好奇心と嫉妬、そして新たに軽蔑の感情を織り交ぜながら啓太に集中していた。
「おいおい・・・。
オレたちの任務は『夢さまが迎えに来るまで啓太さんを護衛する』ことだろ?
命令違反はよくね〜な〜♪」
「どこがですかっ!?
そっちこそ啓太さまにかわいがってもらいたいからって、私情を挟まないでくださいっ!」
「挟んでなんていないさ。
ただ、ご主人様の意思を尊重しようってだけの話さ」
「そうですよぉ。
それに私情を挟んでいるのは、むしろ鈴さんたちのほうじゃないですかぁ?」
「「なっ・・・!?」」
「確かに。オレたち『名無し』と違ってお2人さんは前々から大将にかわいがられていたみたいだからなぁ?」
「わ、私たちは別に・・・!」
「じゃ、文句ねえよな?」
赤毛の美女に言われて、鈴と空は絶句する。
ここで反論すれば怪人としての存在意義に関わるからだ。
自分の存在意義を否定してまで我を押し通す度胸はさすがの2人にもなかった。
勝利を確信した赤毛少女は満足げに笑って言った。
「おっし!話は決まった。
大将!そーゆーことで、オレたちはこれから24時間体制で大将を警護させてもらう。
家事から夜のお供まで、必要なことがあったら何でも言ってくんなっ!」
「ちょっ、何を勝手に決めてんだよ!?
オレはもうそっちとは関わらないって言ってるだろ!?」
正気に返った啓太はあわてて赤毛美女に反論する。
しかし彼女は悪びれもせずに言う。
「なぁに、こっちが勝手にやるって話だ。
大将が気にするこたぁ、何もねえよ!カッカッカッ!」
「だから人の話を聞けって・・・!」
言ってんだろ。啓太がそう言おうとしたその時だった。
キィンッ!
突如、耳鳴りのような甲高い音がしたかと思うと、自分たちを取り巻く空間が一変していた。
先ほど啓太たちを尋問した警官の1人、黒河が正義の味方の顔をあらわに、今まさに啓太たちに襲いかかろうとしていたのである――!