世界の中心で平和を叫ぶ。 115
様子をうかがう大学の生徒・従業員たちと鈴たちの迫力に押され、啓太は弱々しく答える。
この雰囲気の中で平然としていられたら、よっぽどの大物かバカかのどちらかだろう。
「・・・啓太さん。結論から申し上げます。
私たち一同、啓太さんのいかなる頼みもお受けする所存ですが、そのお願いだけはお聞きすることはできません」
鈴の言葉に怪人全員が力強く首を縦に振って同意を示す。
「・・・そっか」
わかっていた答えに啓太もそっけなく答える。
生きる屍のように生きるくらいなら、と思って脱走したのだが。
しょせん自分には無理だったか。
そんなことを考えながら、啓太は自嘲気味に笑う。
だが帰ってきたのは意外な答え。
「いいんじゃね?大将がそうしたいってんならそうしても」
「・・・へ?」
赤毛の美女からの答えに、啓太は思わずマヌケな声を上げる。
いや、彼だけではない。
鈴たち他の怪人たちも呆気に取られている。
「どうせこのまま大将を連れ帰っても、大将に辛い思いさせるだけじゃん。
だったら状況が改善されるまでの間、オレたちで大将を守ればいいだろ?」
「い、いいの?」
「おう!どうせオレたち、そのためにやってきたんだからよ!
遠慮なく使ってくれや!」
「お、おい!」
勝手に話を進める長身赤毛に、黒髪ポニーがあわててそれを止めようとする。
「ん?何だよ?なんかまずいことあったか?」
「ま、まずいも何もないですよ!
こんなこと、夢さまが知ったらどうなるか・・・!」
「大丈夫だって。大将のために力を尽くすのがオレたちの存在意義だろ?」
「し、しかし・・・!」
「今なら夢さまが来るまで自己アピールし放題だぜ?
こんな大チャンス、目の前にしてみすみす見逃すってのかい?」
『――――!』
その言葉に、長身赤毛を除く全ての怪人たちが表情を変えた。
啓太の寵愛を受ける。
それは啓太の所有物となった女怪人にとって、夢のような話である。
まして今は新組織の土台作りのためにライバルがほとんどいないこの状況・・・。
見逃すにはあまりにも惜しい話であった。
一方の啓太も、あまりにおいしい話に思わず生唾を飲む。
何しろ、夢と会うまで女に縁のなかった男だ。
正直こんな粒ぞろいの美女たちにご奉仕されるというのは、男のロマンである。
だがそれを快く思わないものもいた。