世界の中心で平和を叫ぶ。 114
「すみません。私はあなた方の主人になるつもりはありません。
あなたたちはもう私など必要ないはずです。
これからは一人間としてがんばってください。
夢たちをどうかよろしくお願いします」
啓太は反論を待たず、きびすを返してその場を立ち去ろうとする。
が、やわらかい何かに視界と進路を封じられる。
事態を把握しようとする啓太に、背後と頭上から声が聞こえた。
「お、おまえら・・・!」
「そりゃあねえだろ、啓太サマ?
オレたちは大将のためにここまでやってきたんだから、よ?」
「む、むぐぐっ!?」
啓太が左右から迫ってくる圧迫感から逃れ、顔を上げるとそこには見るからに勝気そうな赤毛の美人が太陽のような明るい笑顔を向けていた。
「そうです!なんで私たちのところからいなくなったのか、きっちり!しっかり!納得いくまで説明していただきますっ!」
「私たちには、返しきれないほどに受けたご恩があります。
そのお礼をさせてもらえないのはあんまりではありませんか?」
「鈴・・・?空・・・?」
赤毛の長身美女の脇には見知った顔・・・鈴と空の親子がこらえ切れない怒りや不満をにじませている。
さらにその後ろにはミニマムサイズのお子様が無言で啓太をにらみつけている。
「・・・うぅ・・・」
美女ぞろいとは言え、こうも大人数に迫られて思わず後ずさりする啓太。
そんな啓太を助けたのは先の黒髪ポニーテール娘だった。
「啓太さ・・・ん。
そちらにもいろいろご事情があるかと思われますが、私たちもそれなりの事情があってここに来たのです。
ちゃんとお話・・・してもらえますね?」
黒髪ポニーの啓太はやむを得ず、彼女たちに全てを話すことにした。
そうでなければとても帰ってくれる気配ではなかったから。
そして10分後。
食堂は異様な空気に満たされていた。
その中心にいるのは啓太と6人の女怪人。
あるものは彼らの間に漂うただならぬ空気を感じ。
またあるものはものすごい美人を6人もはべらす平凡な男に嫉妬して。
食堂にいる生徒・従業員たちも聞き耳を立てて啓太たちの様子をうかがっていた。
「・・・わかりました」
「つまり啓太さまは私たちのお役に立てないと感じてお姿を消したわけなんですね?」
「は、はい」