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世界の中心で平和を叫ぶ。
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。 109

思い起こされた記憶を振り払おうと、啓太は独り言を言いながら頭を振る。
周囲の生徒たちが何事かと啓太を見ていたが、啓太はそれどころではなかった。
早くアイツらのことを忘れなければ。
自分はもういらない存在なのだから。
そう自分に言い聞かせてあの頃の記憶を振り払う。
しかしこれが運命と言うのか、そんな啓太をあざ笑うように追い討ちがかかる。

『――次のニュースです。一週間ほど前、○×市△△で起こった怪人たちの襲撃事件についての続報です』
「!!」
その言葉に啓太は思わず反応してテレビを見る。
それは啓太たちが触手怪人に襲われた後で起こった、鈴と空を作った敵組織の大規模な襲撃戦のことだったからである。

『多数の死者・行方不明者を出したこの事件は、正義の味方によって怪人たちが倒されることで一応の解決となりました。
 しかしこの怪人たちは何が目的でここを襲ったのか、またその犯行組織も判明しておらず、警察の調査もまだ発表されておりません・・・』

アナウンサーの解説を悲しそうな、苦々しそうな複雑な表情で見つめる啓太。
しかしニュースは啓太の心のうちなど知らずに続いていく。

『付近のマンションで起こった怪人の襲撃事件との関連を含め、周囲の住民からは早急なる事態の解明を求められています・・・』

それを見た啓太は大きく動揺する。
自分のせいで周囲の人間が迷惑をこうむった。
いやそれは迷惑なんて生易しいものじゃない。
怪人たちを助けようとしたことが、何の関係のない人を何十人も巻き添えにしたのだ。
見ず知らずの人間とは言え、自分のために赤の他人が死んだ。
その事実に啓太は今さらながらに罪の意識を感じていた。

「すみません、乱宮啓太さんですか?」
「ッ!?」

突然名前を呼ばれ、驚いた啓太が振り向く。
するとそこには中年後半と自分と同じくらいの警察官2人が立っていた。
警察官という職業に、啓太は我知らず身構える。

「ああ、すみません。
 私たち、そのテレビでやっていた事件のことを調査してましてね。
 ちょうどあなたのこと探していたんですよ、乱宮さん」

ドッドッドッドッ・・・!

中年警察官の言葉に啓太の心臓が早く脈打つ。
人間、緊張すると本当にノドが枯れ、口の中がパサパサになることを啓太は身をもって知った。
年若い警官の鋭い視線に、足がすくむ。
啓太は懸命に自分を落ち着かせようとするが、うまくいかない。

「あなたにちょっと聞きたいことがあるんです。
 お時間のほう・・・よろしいですか?」

――逃げられない。
何一つ悪事を働いていない啓太の脳裏に、そんな言葉がよぎった。

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