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世界の中心で平和を叫ぶ。
官能リレー小説 - SF

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世界の中心で平和を叫ぶ。 104

跳んでいったエルカイザーは気づかなかった。
新米であるがゆえに、この時自分がどんな失態を犯していたか。
そしてゴールディアースも気づかなかった。
未熟な正義の味方の若さゆえの過ちを。その危険性に。

――――――――――――――――

そして啓太たちが敵組織『レフトファン』を倒してから1週間間が過ぎた。
組織の施設を制圧して以来、啓太たちはその事後処理に毎日追われていた。
何しろやることは山のようにあった。
怪人・戦闘員の素材として誘拐されてきた人間の解放。
誘拐されたばかりの人間には記憶操作を、改造されずに洗脳だけされた人間は諜報員として解放した。
そして改造工程まで進んだ人間は、そのままでいるのは逆に危険ということでやむなく改造を施した。
他にも生き残った敵組織の捕虜の処遇や施設の大半を埋め尽くした『生命の泉』の処分、戦闘で傷ついた怪人たちの治療や施設の修繕などの山積みになった問題を大急ぎで解決しなければならなかった。
敵の残党を逃したのだ、そこから足がついて正義の味方や他の悪の組織が襲ってこないとも限らない。
そんなわけで、仕事に忙殺されていた夢たちは啓太の心の変化に気づく暇がなかった。
『あの時』以来、啓太は心をどこかに置き忘れたかのようにボーッとすることが多くなった。
忙しい夢が気を利かして選り抜きの美女(もちろん怪人)を護衛につけているのに、声をかけてもすぐに反応が返ってこない。
今、啓太の心の中は自分への無力感で満たされ続けている。
実際、啓太は何の役にも立っていない。
怪人たちに自分のDNAを提供してそれっきりだ。
自分たちの主人をこき使うなどあってはならない不敬だろう。
しかしその忠誠心が、逆に啓太に自分の無能さを思い知らせる結果を生んでしまったのだ。

「・・・ふぅ」

数えるのもバカらしくなったため息をつきながら啓太は考える。
今、彼女らは自分というお飾りのご主人様を手に入れたことで自由を手にしている。
鈴と空との約束も果たされたのだから、自分はここから消えるべきではないのかと。

(・・・そう言えば、もう1週間も学校に行ってねーなー・・・。
 家のほうもどうなったんだろ・・・?)

触手怪人の急襲を受け、ボロボロになった懐かしの我が家。
夢・鈴・空との出会いの場所。
無力感と退屈ばかりを持て余していた啓太は、次第にあの家に帰りたくなってきた。

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