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森の奥の謎
官能リレー小説 - SF

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森の奥の謎 8

「それはぶら下がる花の根本を、銃撃や弓矢で撃ち落とすことになっている。だが視界が開けないと狙いにくいし、手近にはそんな狙い撃ちが得意な女がいないので、男が撃たざるを得ない。だから、今はある程度伐採しているところだ。だが、ジョルブンはそれでは時間がかかりすぎて、仲間が消化されてしまうと言って、討伐に行ってしまったよ」

そういう事情だったのか。おおよそを聞くことができた。
若さゆえか、仲間意識か。いずれにせよ焦ったのだろう。親としてはとてもとてもつらいだろうなと思う。聞いていて胸が苦しくなってくる。

「お願いします。兄を助けたいんです」
「私からもお願いします。何とか私達で回りを伐採しますから、どうか兄を…」
「ナミュレ…ミュシャ…」

縋りつくように、ナミュレさんとミュシャさんが姉妹揃って訴えかけてくる。
瞳を潤ませて、こんな女の子に縋りつかれるなんて初めてだ。

「……とうてい放っておける話じゃない。何とかしてみるよ」
「まあ!」
「ありがとうございます!」

姉妹揃って、希望の光を見つけた、そんな喜びで顔を輝かせている。
だが、念のためほかの村人たちにも話を聞いてみようと思って、俺はグイレブ氏に言った。

「ご家族一同、さぞお辛いことでしょう。心中、お察しします。
……ところで、ほかの村人の方々にも話を聞いてみたいですが、いかがですかな」
「あちこちの家で、息子や夫があの木に引き込まれて困っている……もし力になっていただけるなら、答えてくれる者もいるかもしれんな」
「誰でもいいから、家族を取り戻してほしい、村の皆が同じ気持ちです。皆さん協力してくれるでしょう」
「私達の友達も、兄弟を引き込まれて心配しています。だからみんなで伐採して……きっと協力してくれますよ」
「もし必要なら、この体を捧げたっていいから!」
「ナミュレ!」
「そこまで思いつめないで。落ち着いて、ナミュレ」
「お母さん…」

エルジェさんが娘のナミュレさんを抱きしめる。美人親娘が抱き合う光景は美しいが、今はそれを楽しんでる場合じゃないな……だが、男として気合は入る。

グイレブ氏もエルジェさんも、ナミュレさんもミュシャさんも賛成してくれたので、俺は一家の案内で、家々をめぐることにした。
あちこちで聞いて回ったが、聞けた内容はグイレブ氏の言ったこととほぼ同じだった。
息子や兄弟が誘い込まれた人は、みな心を痛めていた。
彼らの為に伐採に参加している女性たちも多くいた。
俺に何か知恵はないかと求めてくる人もいた。余所者にそんな質問をしてくるくらいだから、よっぽどのことだろう。

話を聞く合間に、俺もネットで文献を調べたりしているが、こんな神話にでも出てきそうな奇怪な植物は見当たらなかった。
食虫植物の変異種かもしれないし、遺伝子を回収できたら多くの学者が狂喜するだろう。
だが、そのために村人が犠牲になっていいわけがない。
俺もこの村の人達も、民族は違えど同じ人間なのだ。

「ジョルブンを助けるには、準備が整うのを待つしかないか……」
「あなた……」

改めて現実を突きつけられる形になったご夫婦には、本当に申し訳ない。

軍用ドローンを呼んで銃撃させれば、花を撃ち落とせるかもしれないが……金はかかるが、知り合いの業者に派遣要請を出す。
他にも手があるかもしれないから、今までに集めた情報を総合して、俺の研究仲間のSNSのチャットにこの話を放り込む。あいつらなら何かいいヒントを思いつくかもしれない。
内装デバイスのおかげで、手を動かすまでもなくこうした通信ができるようになった。
いい世の中になった…と思うが、村の人々の事を想えば喜んでばかりもいられない。

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