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森の奥の謎
官能リレー小説 - SF

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森の奥の謎 4

「………」

内装デバイスの表示では、俺達のいる位置は彼の集落があるらしい場所にかなり近い。
ラジェスを帰さないと、集落から人々が捜索に出てきて接触できるかもしれないが、こっちも誘拐犯として彼らから敵視されるだろう。そんなわけにはいかない。
だから、できるだけ穏やかに、できるだけ優しく語りかけた。

「君も、君の集落も困っているんだろう?何か、力になれるかもしれない。どうか俺を信じてもらえないか?」
「……………わかった」

しばらくの逡巡の後、ラジェスはしぶしぶ話し始めた。

「森の奥に、変な何かがいるんだ…」
「変な何か?動物か?植物か?」
「不気味な木だよ。大人の男の人がそいつに近づくと、吸い寄せられるようにふらふらと引き込まれてしまうらしいんだ。
その時一緒にいた女の人によると、ふっとい幹に何本もの枝があって、その下に艶やかで綺麗な花がたくさんぶら下がった巨大な木だったって。
男の人だけがふらふらと引き寄せられて、呼んでも叩いてもそのまま入っていっちゃって、帰ってこないんだ」

彼の村はかなり深刻な状況のようだ。かわいそうになってくる。

「そうか……ありがとうな。そんな気持ち悪いことが起きてたら、そりゃあ怖いよな」
「うん……」
「とにかくラジェス、君はもう帰ったほうがいい。こんな遅くまで外に出ていたら、ご家族が心配するだろう。お詫びしたいし一緒に村まで行かせてほしい」
「うん。早く帰らないと母ちゃんや姉ちゃん達に怒られるよ」
「ごめんな、ラジェス」
「いいよ。村はもうすぐそこだし」

ラジェスが腕を向けたのは、さっき確認した位置表示の通りの方向だ。
俺はラジェスといっしょに歩き出した。すると、10分もしないうちに彼の言う村が現れた。
ほぼ日が暮れた中、動物除けの柵と堀がぼんやりと見え、その内側の家々には明かりがあり、ほのかにあたりを照らしている。

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