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森の奥の謎
官能リレー小説 - SF

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森の奥の謎 3

俺はラジェスに頭を下げた。頭を挙げると、ラジェスは少しだけ警戒を緩めたようだが、難しい顔をしている。案内する気にはなっていなさそうだ。
どう説得したものか。

「俺は学者で、ただ研究のために来たんだ。害を与えるつもりはないし、そこを曲げて何とかならないか?」
「村に勝手に余所者を入れるなって言われてる」

さっきまでは意地で突っぱねるような反応だったのが、大人の指示を理由にしての拒否になっている。
この反応の違いは、説得のとっかかりになるかもしれない。
俺はできるだけ友好的な感情と声音になるよう、意識して穏やかに問いかけてみた。
さっきの「男が足りないんだから」という言葉の裏にある事情も気になる。

近辺で聞いてきた話では、生活物資の取引などでこの密林の近辺に住む人の何人かは時々村に入っているらしいから、部外者を完全拒否しているわけではないだろう。
俺だって、ラジェスと会話できてるのもこの地域の言葉を覚えているからで、内装デバイスの翻訳ツールに頼ってはいない。

「どうして余所者を入れるなって言われているのかな?」
「だって……男が減って危ないから入れるなって母ちゃんが」

どういう事だ?ラジェスが仕方なさそうに言うのを見て、俺は気になった。
男が減って、襲われても抵抗できないから余所者を入れるな……というなら一理あるが、それなら男が減ってるなんて言わないようにって、大人たちから口止めされるだろう。
単に彼の失言だろうか?

「無理にとは言わないが、男が減った理由を教えてくれないか?」
「それは……」

彼も失言を悟ったようだ。慌てて口を押えていた。
言えない事情があるのだろう、ラジェスも睨むような窺うような、複雑な表情で俺をじっと見ている。
俺も無理に問い詰めるような真似はしたくない。
彼がかわいそうだし、彼の肉親や部族の人々の怒りを買えば、研究しようにも信頼関係を築けない。
黙りこくったままのラジェスを見ながら、俺はどうするか考えていた。

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