天才橘博士の珍発明 5
頭を抱える翔太に対し、メイは悩んだ様子も見せず、明るく振舞っている。
これが年の功か、人生経験の違いかと、京子と翔太はあっけにとられていたのだった。
−−数時間後−−
メイの子供夫婦が仕事から帰ってきた。
「あら?翔太さん?どうしてうちに来て土下座しているの?それにそちらの女の子は?」
メイがそこいらの娘のように平然と立っていて、その横で隣人の翔太が土下座して迎えるという状況に、メイの娘であるさくらが発したのが今の一言だ。
「それに、お義母さんはどうしたんだ?今日は通院も何もなかったはずだが…?」
さくらの夫である健悟が辺りを見回して言った。
明らかにおかしな状況に、娘夫婦は怪しみだしている。
「まさか、何か犯罪じゃないでしょうね?そちらのお子さんも、どこのお子さんなの?島崎さん?」
「どういう事かね?島崎さん?」
翔太はひたすらに平伏し、申し訳なさそうにしている。
黙って成り行きを見守っていたメイが、ついにこらえきれず笑い出した。
「ぷっ…ふふふふっ!さくら、私の姿を見て何も思いつかないの?」
「思いつかないの……?って、そう言えば、結衣の子供の頃に似てるなあ。義姉さんとこの鈴音ちゃんにも」
「そう言われれば…この子、結衣の小さい頃みたいね」
結衣は、さくらと健悟の娘で大学生。今は寮生活をしている。
鈴音は、さくらの姉の子で中学生になったばかりだ。
「まさか…本当にお義母さん?」
「健悟さんは流石に気付いたようじゃね。なのにさくらときたら…」
「嘘でしょ?貴方、何を言い出すの?」
夫の健悟は事実を悟りつつあったが、娘であるさくらは事実を受け入れられないでいるようだ。
「仕方ないねぇ。翔太さん、あれを出しておやり」
大失態を犯した武士が主君を前にしたように、ずっと平伏したままだった翔太が体の下から古びたアルバムを取り出した。
「申し訳ありませんでした!とにかくこれを見てください。お叱りやお怒りはその後でお受けします」
「古いアルバムだね…とにかく見てみよう」