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過去の世界へ
官能リレー小説 - SF

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過去の世界へ 7

 この女性のことは、知っている。タイムスリップ前の僕でも覚えているくらい、このあと出てくる女性だ。しかし、元の歴史ではこの時点で話したことはなかったはず。

 明確には覚えていないが、元の歴史でも、確かに美雪の部屋に泊まったことは何度かあったが、こんなに、寝不足になるほどセックスしまくったことは、なかったような気がする。
 つまり
 タイムスリップして、美雪との別れを引き延ばそうと考える→いくつか、元の歴史では言わなかったことを言う→美雪はもっと僕とセックスしたくなる→僕は寝不足になる→バスにぶつかりそうになる→この女性に声を掛けられる と、すでに歴史は確実に変わり始めていることになる。
「ねえ?○○警察署ってどこにあるか知ってますか?」
「え?ああ。ええっと・・・。」
僕はその美人女性に警察署の場所を教えた。
「そう。ありがとう。じゃあね。」
その美人女性はそのまま行ってしまった。
(あの人は警察官なのか?それともただ警察に用があるだけなのか?)

(そういや夜の6時から合コンだったな。バイトが終わったらソッコーで行こう。」
コンビニの中、バイト中
「今日もお客さんはそこそこですね。」
バイト仲間で一つ年上の村上美沙先輩と話していた。
「そうね。まあそこそこの方が疲れなくていいんじゃない。」
「ところで、今日、あの電話会社の社長が重大発表するんだって」
「そうなんですか」

 美沙先輩はそう言うが、僕は、その内容を知っている。あえて触れまい。

「あの社長『私は、25年間この日が来ることを夢見て来ました。』ってツイートしたんだって。ネットでは、育毛技術だという噂があるらしい。ヒロト君、どう思う?」
「電話会社が育毛剤ですか?いくら、あの社長の風貌だからといって…」

 確かに、電話会社がロボット、というのも十分に意外性はあった。

 それでも、僕がいた時代、2014年に一般消費者の耳になじんでいた我が国の家電メーカーは、少なくとも一般消費者部門ではほとんど聞かなくなっていたことに対し、2014年にあった3つの電話会社はどれも、僕たちがいた時代にはこんにちより大きく、多角化して存在している会社だった。
 このあとの多角化を考えると「一般消費者にも手が届く人型ロボット」はある意味、その時から当然の流れだったのかもしれない。

元の歴史で僕が『へぇすごいな』ぐらいに一般的な反応をしていた隣、外山の奴が驚喜乱舞している姿が懐かしい。
そして明日の朝一番、ラブドールとしての使い道がないと知って、絶望的な落胆を見せてくれるのだろう。
残念ながらそうした仕様はもう十年ぐらい先、しかも違法コピー品の類で回収騒ぎになったと記憶する。

バカでスケベでチャラくて態度がデカくて、そのくせどこかヲタクっぽくもあり子供っぽくもある。
その言動は一々イラッと来るけれども、外山はどこか憎めない男であった。
そうして僕が思い出し笑いすると、美沙先輩は容赦なくイジりにかかる。

「何笑ってんの?溜まってんの?控え室でパクッとやってやろうか?」

こんな人が僕の中学時代に筆卸してくれた相手だと思うと今更泣けてくる。

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