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過去の世界へ
官能リレー小説 - SF

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過去の世界へ 11

虹野ゆみは若干ビッチ風のギャル系が売りで、ドーテーとかホーケーとかキモい!という罵りに喜ぶドMなファン層が厚い。
スキャンダルの一つも実話暴露か宣伝目的のヤラセか解らない路線、風評被害も芸の内という雰囲気を事務所が認めているみたいで『彼氏』なんて話は洒落にならない。

横にも縦にも大きい肥満体の男は、パツパツなネズミ色のスーツを更に張り詰めさせた様にも見えた。

「ぼぼぼ僕より?そそそそんな就職もしていないニートを!えええ選ぶっていうのかぃいいい?」

言い草からして僕はこの人が、いやコイツが少なくともマネージャーや芸能関係者の類ではない事と、ベビーフェイスに埋もれた瞳はそうとう視界が狭い人種だという事が理解出来た。
彼だって学生の時分はあっただろうに、見解の狭い男だ。

当の虹野ゆみ、いかにもな金髪だけど特に飾るでも盛るでもなく、プライベートはがっつりユニク○服の地味キャラ眼鏡っ子。
僕にしがみつく指先は高い所から降りられなくなったハムスターの様に震えている。
テレビでは毒舌マシンガントークの芸風で押してても、普段はこんな感じだったんだろうか。

しかしそれよりどうしたもんか、僕は貧弱な坊やまでいかなくとも、ここまで図体も態度もデカい奴を抑えられるか解らない。
にらみ合い、完全に僕を悪のニートと認識して駆逐する気満々だった巨大デブが突然青くなる。

「どうしたんだいヒロトくん?」

彼とは正反対に筋肉でシャツをパツパツにした大森が、僕の後ろでドリンクバー用の空グラスを持ってキョトンとしていた。

「卑怯者!暴力に訴える気だな!通報するぞ!貴様らはおしまいだ!」

大森級の巨人と初対面した気持ちは解るけど、デブは何かと自己中に棚上げした捨て台詞を並べながら逃げていった…。

ー数分後ー

「…つー訳で?事務所のオゴリにさして頂きますさかい!」
「あはは?ヒロトくんのお陰で遊び代ういちゃったね!」

僕たちは遅れて現れた、大森と同じぐらいゴツいボディーガード兼マネージャーさんの配慮で、VIPルームへと案内されていた。

「いやほらそれは結局んとこ大森が…。」
「僕より弱いヒロトくんがあんなオスモウ相手に度胸見せたから、こうして生きて今があるんじゃないか。」

やはり大森は誉め言葉さえも相変わらずKY気味、しかもさりげなく僕が死んでたかも知れない言い方だし、否定しきれないけど。

そういえば虹野ゆみはまだマネージャーさんの隣で震えている。

僕のいた未来での虹野ゆみは僕たちと知り合うことはなく、今も巨乳でかわいいけど、未来ではもっと美人になって大人気アイドルにまで上り詰めていたと思う。
ついでに言うと、誰かと結婚したとかいうニュースは聞かなかった。
そして、マネージャーさんが僕の方を見て、
「あのー、ヒロトさんの家にゆみちゃんを泊めてあげてほしいんですけど。朝になったら僕が車で迎えに行きますから。」


「「えええっっ!」」

 一同、驚きの声をあげた。僕と美雪以外は。

「あの、大丈夫なんですか?」

 僕は、驚く以前に、マネージャーさんにそう尋ねた。

「あ、もし写真撮られたら、ですか? 大丈夫です。アクシデントに遭って緊急避難的にスタッフの部屋に退避した、のような説明をしますから」

 まあ、スキャンダルどんとこいの路線だから、いいのかもしれないが…

 次に僕は、美雪の方を見た。

「美雪、美雪の部屋に泊まってもらった方がいいのでは」

 僕は、マネージャーさんの方を向いて

「僕の彼女なんです。緊急避難なら、女性の部屋の方がいいと、思うのです」

 美雪が口を開き、ゆっくり言った。

「泊めてあげたら。ゆみさん、ヒロト個人を、信用したんでしょう」

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