PiPi's World 投稿小説

ハーレム宇宙戦艦
官能リレー小説 - SF

の最初へ
 8
 10
の最後へ

ハーレム宇宙戦艦 10

地球政府はこれを反乱と見なし、鎮圧のため軍を派遣…こうして人類史上初の本格的な宇宙戦争“第一次火星戦争”が勃発したのであった。

地球政府は戦いはすぐに終わるだろうと予想していた。
なぜなら当時の地球と火星との国力差は10倍以上…軍事的にも地球が火星を圧倒していたはずだった。
ところが一枚岩ではない上に足並みもバラバラな地球軍に対し、士気の高い火星軍は各方面で善戦…ついに地球軍を退け、一時休戦に持ち込んだのである。
それは事実上、火星の勝利であった。

それから8年…今、地球と火星との間に再び戦端が開かれたのである…。


…さて、その火星で今、一人の偉大な英雄が世を去ろうとしていた。
そう、初代国家主席のジャン・カーターである。
彼は火星を独立へと導き、人々を地球の支配から解放した英雄として8年に渡って君臨し続けて来たが、国家主席としての重責は病魔という形で密かに彼の心身を蝕み、気付いた時には既に手遅れ…ついに臨終の時を迎えていた。

火星共和国、首都ヴァルスーム、国家主席官邸…
寝室のベッドの周りに人々が集まっている。
「あぁ…目が霞んで来た…いよいよ最期のようだ…」
「閣下!」
「閣下ぁ!」
「お父様…っ!!」
ベッドの上には今にも死にそうな壮年の男性…彼こそ火星共和国建国の英雄ジャン・カーターその人である。
周りに顔を揃えているのは火星共和国政府の重鎮達だ。
その中に一人だけ、12〜13歳と思しき可愛らしい少女が混ざっていた。
彼女の名はソリス・カーター…カーターの一人娘にして、唯一の肉親である。
カーターは居並ぶ政府高官達に向かって言った。
「…モタツキー、ナポヒストラー、居るか…?」
「はい、閣下。モタツキー、ここに…」
「ナポヒストラーもここに!」
名を呼ばれ、二人の対照的な男が進み出る。

一人は中肉中背で顔は特に美男とも醜男とも付かない平凡な顔立ちの男。
だがその物言いは穏やかで、センスの良いスーツを着こなしており、どことなく品の良さを感じさせる。
彼の名はラフ・モタツキー…カーターの右腕とも言うべき存在で、ずっと内政や外交の補佐をして来た男だ。

一方もう一人の男はモタツキーとは対照的に筋肉質で長身、顔立ちは掘りが深くなかなかの美男で、その眼差しからは力強さが感じられる。
火星共和国の軍服に身を包み、胸元に光る数多くの勲章が彼の武勲を物語っている。
単独であれば非常に威風堂々とした印象だが、モタツキーと一緒に並ぶと何だか野暮ったく見える。
彼の名はジョセフ・ナポヒストラー…モタツキーがカーター政権の政治担当ならば、彼は軍事担当であった。

カーターは二人に言った。
「…我が亡き後の火星共和国の運命はお前たち二人の舵取りに掛かっている…良いか?モタツキー、ナポヒストラー…互いに良く協力し合い、共和国を…そして人民を…頼んだぞ」
「「ははあ!!」」
「…もしも内部分裂などしてしまったら地球との戦いには勝てない…一致団結してこの国難を乗り越えるのだ」
ナポヒストラーが口を挟んだ。
「閣下!そのためにも是非とも後継者をご指名ください!閣下の意志を継ぎ、共和国を導くべき新たな指導者を…!!」
「その必要は…無い」
「な…何ですとぉ…っ!!?」
ナポヒストラーは驚く。
「…地球との戦いが終わるまでは、私が死んだ事実は徹底的に隠すのだ…国外にも、人民にもな…」
モタツキーが言った。
「閣下がまだ生きていると見せ掛けた方が、地球に対しての牽制になるから…ですね?」
「さすがはモタツキー…その通りだ…当然ながら新たな指導者の指名も行わない…戦いが終わってから皆で話し合って決めるんだ…」
そこまで言うとカーターはフゥ…と一息ついて、それから愛娘のソリスを見て言った。
「…私からは以上だ…ここからはソリスと二人だけにしてくれ…最期は親子水入らずで話したい…」
「解りました、閣下…」
「ではお名残惜しいですが、我らはこれで…」
高官達は寝室から出て行く…。

二人きりになったカーターはソリスに言う。
「ソリス…思えばお前には父親らしい事をあまりしてやれなかったなぁ…許せ…」
「いいえ、お父様…ソリスはお父様を誇りに思っています」
ソリスはカーターの手を握り、両目から涙の粒をポロポロと零しながら答える。
いよいよ最期の時が近い事を二人とも悟っていた…。
…が、ここでカーターは突然思い掛けない事を言い出した。
「ソリス、お前はモタツキーをどう思う?」
「……は?」
「いや、だから…どう思う?って聞いてんじゃん」
「お…お父様、こんな時に一体何を…?」
「ソリス、お前はモタツキーの妻になれ」
「えぇぇっ!!?」
数年前に最愛の妻を亡くしたカーターは、再婚もせず娘のソリスと二人きりで暮らして来た。
カーターはソリス一人を残して逝く事が心残りだったし、ソリスもその想いは良く解っていた……が、だからって何も今そんな具体的な話題に踏み切らなくても良いじゃない…とソリスは思う。
そんな娘の内心など知る由も無いカーターは言った。
「実は私、ぶっちゃけ後継者はモタツキーを置いて他には居ないと考えているのだ。特にナポヒストラー、アイツだけは100%有り得ない。アイツはマジでヤバいぞ。野心家で目的のためなら手段を選ばない人間だ。もしアイツがトップになったら、せっかく作った共和国を滅茶苦茶にされる。それだけは絶対に避けねばならん」

SNSでこの小説を紹介

SFの他のリレー小説

こちらから小説を探す