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ハーレム宇宙戦艦
官能リレー小説 - SF

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ハーレム宇宙戦艦 9

「ハァ〜…寿命が縮みましたよ…」
「フフフ…ありがとう、カナメちゃん」
会議室を後にしたクリスとカナメは司令部の廊下を歩いていた。
「それにしてもすんなり終わって驚きましたよ。もっと色々問い詰められるかと…」
「今回の尋問は形だけの物よ。多分あの場にいた全員が私達の証言を嘘だと見抜いていたでしょうね…」
「えぇ!?じゃあどうして…?」
「軍上層部はずっと開戦を望んでたのよ。今の上層部は反火星派が多数を占めてるからね。最近じゃあ水面下で和平交渉が進められてるって噂もあったし、彼らも相当焦ってたはずよ。だから威力偵察という名の挑発行為を繰り返していた…その内の一隻が私達のリリウムだったって訳…」
「…じゃあリリウムが火星軍とトラブってしまった事は、ある意味では上層部にとっては思う壺だったって事ですね…何て事だ…」
真実を知ったカナメは一気に肩の力が抜けた。
「世の中なんてそんな物よ…それよりせっかく地球に戻って来たんですもの、久しぶりに思いっきり羽根を伸ばしましょう…」
「そうですね、艦長」

リリウムは今、宇宙軍港のドックで修理中である。
その間、乗組員達には休暇が与えられていた。

ちょうど昼時だったので二人は司令部の食堂で昼食を取る事にした。
「僕、司令部で食べるの初めてです」
「そう言えばそうよね。ここの食堂、安くて早いから良いのよ〜…ま、味の方は微妙だけどね」
「宇宙食よりは全然良いですよ。それに航海が長期になると艦内で限られた水分やタンパク質を再構成して食べ物にしなきゃいけないから…」
「言わないで」
そんな事を話しながら二人は食券を買って、プレートに配膳されたランチを受け取り、窓際の適当な席に着いて食べた。
ちなみにカナメは和食、クリスは洋食である。
「ランチ値上がりしてたわ…ちょっとショック」
「それってやっぱり火星からマーズナイトが入って来なくなって各種産業界が打撃を受けた影響ですかね?」
「ま、巡り巡って…ね。やはり火星は地球の支配下に置いておくべきなのよ…ランチのためにも!」
カナメは思う。
(上層部の人達も案外こんな感じだったりして…)
「地球の繁栄のためにはマーズナイトが必要不可欠だわ。例えどんな犠牲を払おうと…」
「そう言えば艦長は10年前の火星事変にも従軍されたんですよね?」
「ええ、昔の話よ…」
クリスはフッと遠い目をして微笑んだ。
“火星事変”…後に“第一次火星戦争”と呼称されるようになるのだが、この時点ではこう呼ばれていた。
「艦長も火星軍と戦ったんですか?」
「まあね…」
それについてクリスはあまり語りたくないようだったので、カナメは話題を変えた。
「でもどうして“戦争”なのに“事変”って言うんでしょうかね?」
「それは負けたからよ。でも国として“敗戦”を認める訳にはいかなかった。だから“事変”だなんて曖昧な言葉で濁したの。政治家や官僚や軍人っていうのはプライドだけは高い生き物だからね。…正直、火星の労働者達が愛想を尽かしてジャン・カーターを支持した気持ちも少し解るわ…」
「か…艦長…!」
カナメは慌てて辺りを見回した。
幸い誰にも聞かれていなかったようだが、もしカーター支持者と疑われでもしたら面倒な事になるのだ。
何せ敵の親玉なのだから…。


ここで“ジャン・カーター”なる人物と、火星が独立するまでの流れについて説明しよう。
ジャン・カーターは火星の反乱軍のリーダーであり、後に成立した火星共和国(地球政府は認めていない)の初代国家主席となった男である。

もともと彼は火星生まれの教師だった。
教え子達は主にマーズナイト鉱山で働く労働者の子供達…つまりカーター自身は、いわゆる普通の“労働者”と呼ばれる人々よりは少し上の人間だった。
しかし彼は労働者達に最低賃金で危険かつ過酷な労働を強い、その利益を根こそぎ搾取していく地球のやり方に疑問を感じ、仲間達と共に勉強会を立ち上げ、労働者達への“教育”を始めた。

彼らの目標は火星の地に誰もが平等に暮らせる無政府共産の楽園を築く事であった。
最初は彼らの話に耳を貸さなかった労働者達だったが、次第にその考えに賛同する者達が増え始め、彼らの教えは密かに、静かに…だが着実に火星の労働者達の間に浸透していった…。

そしてある時、マーズナイト鉱山で偶発的に発生した暴動が元となり、瞬く間に全惑星規模の反乱に発展・・・総督府は占拠され、駐留軍は逃げるように地球へと撤退した。
なぜここまで事が上手く運んだかと言うと、ジャン・カーターを支持したのが労働者達だけではなかったからだ。
地球政府の腐敗に憤りを感じていた火星総督府の若手の官僚や軍人、それに科学者といった若い知識人たち・・・更には傭兵や宇宙海賊といったアウトロー連中もジャン・カーターの思想に賛同し、彼のシンパになっていたのである。

それだけ地球政府の堕落と腐敗が酷かったからなのだが、ジャン・カーターという男の頭脳とカリスマ性も卓越していた。
現に火星の民衆の間では(宗教が禁じられているにも関わらず)ジャン・カーターは神聖視すらされており、まさしく現人神(あらひとがみ)のように扱われている。

さて、支配者を追い出したジャン・カーターとその仲間達は、地球からの独立と自分達の新たな国家“火星共和国”の成立を宣言…初代国家主席には満場一致でジャン・カーターが就任した。
だが、これを地球政府が認める訳が無かった。

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