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ハーレム宇宙戦艦
官能リレー小説 - SF

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ハーレム宇宙戦艦 14

ゆえに彼は非常に堂々としていた。
常に豪胆であった。
口が上手かった彼は事変終結後の責任追求から巧みに逃れ、その後は軍内の日系人コミュニティーに守られながら復権の時を伺っていた。
そして、その機会はついに訪れたのである。

「セイヤ・テラグチ中将閣下!!!マサノリ・クジ大佐、参りました!!!」
「おぉ!!来てくれたか!!クジ参謀!!実は今度のフォボス攻略作戦、是非とも君に作戦立案を担当してもらいたい!!」
「ははあぁーっ!!!有り難き幸せー!!!全てこのクジにお任せあれ!!!ワーッハッハッハッハッ!!!」
「おぉう!!頼もしいのう!!頼もしいのう!!ガーッハッハッハッハッハッ!!!」

…このフォボス攻略作戦の概要は以下のような物であった。
まず艦隊編成は、空母を中心とした航空艦隊とし、艦船からの砲撃ではなく航空戦力(宇宙戦闘機)によって敵基地を叩く。
そして敵基地の無力化に成功した暁には、陸戦隊をフォボスに降下させて基地を占拠する。
これが成功すればフォボスを足掛かりに火星本土への直接攻撃が可能となる訳である。

さっそく作戦概要と作戦司令部のメンバーが各艦隊に伝えられた。

「…今度の大規模作戦、総司令官が“あの”テラグチ中将ですって…?」
「はい…で、参謀長にクジ大佐…だそうです…」
「あぁ…」
「何て事…」
「意味が解らない…」
「八年前の悪夢の再来だぁ…」
「中央司令部の連中、一体なに考えてるんでしょう…」
作戦司令部の顔触れを聞いたリリウムのクルー達は、思わず嘆息し、口々に嘆く。
「……」
滅多な事では動じない艦長のクリスさえ、眉間にシワを寄せたまま固まっている。
「あ…あのぉ…ちょっと話が見えないんですけど…」
一人、事情を知らないカナメが、おずおずと尋ねる。
アイーシャが答えた。
「八年前…第一次火星事変の最中、今回と同じように総司令テラグチ、参謀クジの指揮下で実行された作戦があったんだ…その名を口にするのも忌まわしい“火星本土降下作戦”…またの名を“バーベキュー作戦”!」
「バ…バーベキュー!?…いや、なぜ!?」
意味不明すぎる作戦名に驚くカナメに、今度はサーシャが詳しく解説する。
「…この作戦は火星本土に陸上部隊を降下させ、そのまま一気に敵首都を占領し、戦争を集結させる事が目的でした…が、作戦決行時点で地球軍は未だ火星周辺の制宙権を把握していなかった…つまり、いきなり敵の懐深くにイチかバチかの斬り込みを掛けるという非常に危険かつ無謀な大博打だったのですよ。しかも降下した陸上部隊には食糧・弾薬などの補給の当ては一切ありませんでした。幕僚の一人にその危険性を指摘されたテラグチ中将は笑ってこう言ったそうですよ…『心配ない。食糧も弾薬も敵の物資を奪えば良い。まずは敵の農場プラントを占領して、そこの家畜達をバーベキューにして食って、たっぷり精を付けてから首都に攻め込んでやろうじゃないか』とね…」
「……」
カナメは言葉が無かった。
およそ司令官…いや、軍人の言葉とは思えない。
もう認識が甘いとか、そういう次元の問題ですらない。
開いた口が塞がらないとは正にこの事だ。
それでも何とか絞り出すように口を開く…。
「…そ…それで、その作戦は…結局は…?」
「決まってるじゃないですか。大敗ですよ。しかも参加総兵力500万のうち死者・行方不明者300万人という大犠牲を出しての歴史的大敗北です。何せこれが決め手となって地球は火星との一時休戦に踏み切らざるを得なくなったんですからね。本来なら銃殺刑になっていても不思議ではないのですが…」
そこに、ずっと黙っていたクリスが静かに口を開いた。
「…その通りよ…彼らは300万の人々を死地に追いやっておきながら、自分達だけのうのうと生き延び、その罪からも逃れた…本来ならば生きていてはいけない人間なのよ…」
「…か…艦長…?」
普段は決して見せないクリスの怒りを湛えた瞳にカナメは思わず寒気を感じる。
「…たぶん彼らの頭の中にはジャパニーズ・ニンジャが敵の城に単身で飛び込んで敵のサムライをバッタバッタと斬り捨てていくイメージでもあったのかも知れない…でも、そんな妄想家の立てた作戦に従って命を落とした人達は一体どうなるの…彼らの人生は…家族や…愛する人は…」
クリスの握り締めた拳は震えていた。
その鬼気迫る様にカナメは戸惑いを覚える。
(い…いつもの艦長と違う…一体どうしちゃったって言うんだ!?)
察したアイーシャがそっと耳打ちして教えてくれた。
(艦長な、その火星本土降下作戦で父親と婚約者を亡くしてんだよ…)
(え…っ!!?)
(…婚約者は火星に降下した地上軍の一部隊の指揮官だったらしいけど、敵陣のド真ん中に降ろされたは良いが、作戦が始まってからクジ参謀が急に攻略目標を変更してな、結局その地点には後続の増援部隊も軍艦からの援護射撃も無く、その部隊は敵に包囲されて哀れにも全滅…父親は戦艦の艦長だったが、撤退時にテラグチ総司令の乗る旗艦を敵の猛攻から守るための盾にされて撃沈…)
(そんな…酷い…二人とも味方に殺されたようなものじゃないですか…)
(その二人だけじゃないさ…テラグチもクジも、部下を将棋のコマ程度にしか思ってない…ま、第一次火星事変がそもそも私達の入隊する前の事だから聞いた話だけどな…)
(……)
カナメはおずおずとクリスに歩み寄ると、思わず自分が悪い訳でもないのに謝ってしまう。
何というか…そうせずにはいられなかったのだ。
「あ…あの、艦長…その…ごめんなさい…!」
「はい…?」
突然のカナメの謝罪に、今までの怒りも忘れてキョトンとした顔をするクリス。


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